相続財産(遺産)
被相続人が経営していた個人事業を相続するとき
はじめに
被相続人(亡くなった方)が個人事業を経営していた場合、個人事業を相続人が引き継ぐのか廃業とするのか、判断する必要が出てきます。
また、引き継ぐにしても廃業とするにしても諸々手続きを進めることになり、いくつか理解しておかなければならない事項があります。
事業用財産や債務を相続する
故人が事業に用していた工具や設備などの事業用財産は、遺産分割協議などを経て相続人の1人に相続させた方が賢明です。
もし事業用財産を相続人間の共有としてしまうと、設備の使用や処分について共有者の同意が必要になってしまうので、事業を引き継ぐにしても廃業するにしても手続きが面倒になる可能性が高いです。
もし事業を引き継ぐ方が決まっている場合は、その方が相続するのが得策かと思います。
また相続では被相続人の債務などのマイナス財産についても承継されることになります。
もし被相続人が銀行などの金融機関から借り入れを行っていた場合、承継先を決めていなければ相続人全員が返済の義務を負います。
こちらもあわせて誰が返済義務を負うのか、もしくは割合を決め複数人で返済義務を負うのかなど決めていくことになります。
この場合、プラス財産よりも債務などのマイナス財産の方が多くなってしまう可能性があれば、限定承認や相続放棄も視野に入れておく必要があります。
準確定申告を行う必要がある
個人事業主が亡くなった時に気を付けなければいけないのはこの準確定申告です。
個人事業主は毎年決められた期間内に1年間の収入や支出を報告する確定申告を行わなければならないのは、多くの方がご存じかと思います。
そして個人事業主が亡くなった際は、準確定申告の手続きを行う必要があるのです。
これは相続人が、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、1月1日から亡くなった日までの所得について申告し納税するというものです。
相続手続きに忙殺されている中手続きが増えるのは大変ではありますが、失念しやすいのがこの準確定申告ですので、注意しましょう。
各種廃業や承継についての届出が必要になる
所得税関係の相続手続きを行うため、下記のような書類を所轄税務署に提出します。
(1)基本的に必要となる届出
・死亡届出書
・廃業届
・青色申告の取りやめ届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
・事業廃止届(消費税課税業者であった場合) 等
(2)事業を引き継ぐ場合に必要となる届出
・開業届出書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
・青色申告承認申請書 等
おわりに
故人が個人事業主であった場合、事業承継・廃止手続きのために各所に届出を行う必要があります。
さらに届出には期限が決められていることがほとんどですので、相続手続きで忙しい中ひとつひとつ確認し届け出ることを忘れないようにしなければいけません。
お悩み事があるときや自分で調べる時間があまり取れないときは、個人事業の承継に詳しい専門家を頼るのもひとつの手です。
(文責:坂本)