相続コラム

~相続財産(遺産)~
預貯金等の相続

2023.11.27

相続財産(遺産)

外国の銀行口座を相続する

はじめに

相続では亡くなった方の財産が包括的に相続対象となりますが、亡くなった方が海外の銀行口座を保有していた場合はどのように手続きは進むのでしょうか。

簡単に結論からお伝えすると、外国の銀行口座が関わってくる場合、日本の銀行口座における預貯金相続よりも手続きに時間と労力を費やすことになります。

今回は外国の銀行口座を相続する際の実態についてご紹介します。

 

なぜ外国の銀行口座の預貯金相続は大変なのか

(1)国ごとに法制度や手続きが異なる

外国に亡くなった方の相続財産がある場合、国によって法制度が異なるためその確認作業が必須となります。

大まかにイギリスやアメリカを中心とする英米法と、ヨーロッパ各国を中心とする大陸法の2つに分けることができ、日本の相続法に近いのは大陸法です。

 

英文法は「相続分割主義」を採用しており、動産相続と不動産相続を別々のものとして考えます。

さらに相続時に裁判所によって相続財産管理人が選出され、財産管理人が亡くなった方の代理人として相続手続きを進めていくことになります。

このような手続きをプロベートと言います。

 

一方、大陸法は「相続統一主義」を採用しています。

相続統一主義では、どの国の相続法を適用するかについて被相続人の国籍等を基準に決定します。

一般的に英文法よりも大陸法の方が手続きが容易になることが多いです。

 

このように対象の国によって相続に必要な手続きが異なるので、一般の方が自分で外国の預貯金相続を行おうとしても、かなり専門的な知識が求められることになります。

 

(2)書類を翻訳したり、外国語でのやり取りが必須になる

こちらはイメージしやすいかと思いますが、現地の弁護士に手続きに協力してもらう機会も出てくるので、外国語でのやり取りが必要になります。

また、相続関係を証明するための書類(戸籍など)を全て翻訳し提出するので、こちらもかなり労力を割くことになります。

 

(3)日本の預貯金相続よりかなり時間を要する

こちらは目安になりますが、預貯金相続を完了させるのに英文法を採用している国の場合1年~3年、大陸法を採用している国の場合半年~1年程度の時間を要すると言われています。

日本国内の銀行口座の場合は基本的に数カ月で手続きが完了しますので、日数面でも外国の預貯金相続は大変な労力を要します。

 

外国の預貯金相続の流れ

では実際の外国の預貯金相続の流れですが、全て記載すると国によっても異なり非常に細かくなってしまうので、一般的な流れをご紹介します。

(1)英文法適用の場合

 ①プロベート裁判所による相続財産管理人の指名

 ②相続財産と相続人の確定

  ※誰が相続人となるかは日本で相続する場合と異なる可能性があります。

   各国の法律に従い、相続人を確定させましょう。

 ③相続税等の納付

 ④裁判所から分配許可をもらう

 ⑤実際に預貯金が分配される

 ⑥裁判所へ手続き完了の報告を行う

 

(2)大陸法適用の場合

 ①対象の銀行に相続手続きを行いたい旨を連絡する

 ②必要書類を収集し、翻訳する

 ③公証役場、外務省、大使館など関係各所の認証を受ける

  ※翻訳内容の確認や準備の過程が規定に従っているか確認されます。

 ④対象の銀行に払い戻し請求を行う

 ⑤預貯金が実際に払い戻される

 

おわりに

今回は外国の預貯金相続について、基本的な事項をご紹介しました。

実際にはもっと細かな手続きが必要となり、非常に専門的なものになるので、国際相続に強い弁護士等の専門家を頼ることを強くおすすめします。

 

(文責:坂本)

 

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