相続コラム

~遺言~
その他

2024.09.30

遺言

自筆証書遺言書の相続人住所誤記載のケース

はじめに

先日、自筆証書遺言保管制度を利用した自筆証書遺言にもとづく相続登記のご依頼をいただきました。ご依頼者様は既に、法定相続情報証明制度を利用された法定相続情報一覧図もお持ちになっており、遺言書には遺言執行者(相続人であるご長男)も指定してありましたので、被相続人であるお父様も、ご依頼主様であるご長男様も、先々のことを見通して行動される、きちんとされた方という印象をもちました。

自筆証書遺言保管制度を利用されている場合、家庭裁判所による検認の必要もありませんし、法定相続情報一覧図を添付する場合、相続登記の申請においても、被相続人の出生から死亡までの戸籍や、相続人の戸籍住民票の添付も基本的に不要(※被相続人の住所や、相続人の住所に変更がある場合は、別途書類が必要)ですので、登記申請の原因証明情報としては、自筆証書遺言と、法定相続情報一覧図という非常にシンプルなものになります。

遺言書誤記載(非常に軽微!)の発覚

ところが、よくよく確認させていただいたところ、自筆証書遺言書に記載の相続人の住所と、法定相続一覧図記載の相続人の住所について、最後の枝番だけが異なっていました。ご依頼主様に確認すると、遺言書の方が誤っており、お父様の誤記載によるものとのことでした。不動産の表示や相続人の指定等、その他の部分は完璧な遺言書でしたので、正直、「この1数字の誤りだけでこの遺言書が使用できないかもしれない??」と、一抹の不安がよぎりました。この遺言書による相続登記は、東京と神奈川の2管轄に申請するものでしたので、両法務局に照会したところ、遺言書作成当時の当該相続人の住民票を添付することで、遺言書記載の住所の方が誤りであったことの証明として取り扱うので、遺言書自体は、登記原因証明情報としてそのまま使用して差し支えないとのことでした。

そもそも、遺言書の中で、受遺者として相続人を指定する場合は、「妻〇〇」「長男△△」等で特定すれば足り、(相続人の)住所の記載は、遺言書の絶対的記載事項ではないため、記載した相続人の住所が住民票と異なっていたとしても、遺言書の効力を否定するほどのものではない、というのがその考え方のようです。(ただし、今回の取り扱いは、全国的に統一されたものではありませんので、個々のケースについてはその都度、管轄法務局へ確認する必要があると思われます。)

おわりに

遺言書は亡くなられた方の最後の意思表示であり、法定相続に優先されるものですので、遺言書の内容と異なる相続配分をしようとする場合は、相続人全員の合意が必要となります。また、法定相続情報一覧図は不動産の相続登記のみならず、金融機関の口座の承継等にも使用できますので、口座の数が多い場合等は便利です。

弊所では相続登記はもちろんのこと、遺言書の作成や法定相続情報証明制度の利用についてもご相談を承りますので、ご検討の際は是非お気軽にお問合せください。

 

(文責:村上)

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