相続登記
被相続人が管理していた農地を相続したら
はじめに
現在日本の国土の約1割が農地として利用されています。
年々農地の面積は減少しているものの、農業を営まれている方はもちろん、そうでない方でも、相続によって農地の所有者となる可能性があります。
今回は農地の相続登記について紹介します。
農地登記の基礎知識
①農地を売買、贈与、交換、貸し借りしたいときは農業委員会の許可が必要
食料の供給を安定させるためには、優良な農地を確保し、効率的に利用することが大切です。
そのため農地法では農地の権利移動を許可制とし、望ましくない目的での利用を制限し、生産性の高い経営体が農地を運用していくよう取り組んでいます。
よって農地の所有権が移転する際は農地法規定の許可を取得する必要があるのです。
また、所有権移転登記の際には農業委員会の許可書の提出が必要となります。
②農地を転用(宅地など他の地目に変更)するときは農業委員会の許可が必要
①と同様の理由で、転用の場合も農業委員会の許可が必要です。
農地を相続したときはどうなるの?
原則として、農地の所有権を移転する場合には農地法所定の許可が必要と紹介させていただきましたが、相続や遺産分割によって農地を取得した際は許可は不要となります。
登記申請の際に許可書を提出する必要もありません。
よって登記申請においては基本的に通常の相続登記と同じ手続きとなります。
しかし相続であっても、農地の所有者が変わったことについて農業委員会へ届け出る必要があります。
農業委員会が相続による所有権の動きを把握して、農地の有効利用を図るためです。
この農業委員会への届け出には期限があり、相続を知ったときから10か月以内にしなければなりません。
届け出をしなかったり虚偽の届け出をした場合は、10万円以下の過料が科されることがあります。
以前は農地を相続したときに農業委員会に届け出る必要はありませんでしたが、耕作を行っていない農地や所有者不明の土地が増えてしまうという問題が出てきました。
そこで平成21年に農地法が改正され、相続時の農業委員会への届け出が義務づけられました。
農地の相続を放棄したいときの注意点
農業従事者の人口は年々減少の一途をたどっています。
もし相続人全員が農業を引き継ぐ意思がない場合、相続人全員で相続を放棄することもできます。
ただし注意点として、相続放棄をすると農地以外の遺産も受け取ることができなくなってしまいます。
さらに、相続人全員で相続を放棄しても、相続財産管理人を選任するまでは引き続き農地を管理しなければなりません。
また、相続人の全員が相続を放棄すれば、被相続人の遺産は「相続人のいない財産」となります。相続人のいない財産は最終的に国庫に収められます。
その手続きには1年以上の期間がかかり、期間中相続財産管理人に報酬を支払う必要があります。
相続放棄も1つの手段ですが、慎重に決断することが大切です。
(文責:坂本)