相続コラム

~相続登記~
遺言書
遺産分割協議書

2022.06.23

相続登記

遺言書・遺贈による登記手続き

はじめに

遺言書は亡くなった方の、財産に関する最後の意思表示です。
厳格なルールに基づき書式が決まっており、遺言書がある場合は原則として法定相続よりも遺言の内容が優先されます。
また相続登記手続きにおいては、遺言書による場合、遺産分割協議による場合、法定相続による場合と、それぞれ手続きや提出書類が異なります。
今回は遺言書により相続登記を行う場合の手続き内容についてご紹介します。 

遺言書の検認手続きとは?

遺言書の形式には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。
今回は登記手続きについて主に紹介するため細かな部分は割愛させていただきますが、簡単に違いを説明すると、以下のようになります。 

自筆証書遺言

被相続人(亡くなった方)が自筆で作成し、自ら保管する遺言

公正証書遺言

公証役場で公証人等と一緒に作成し、公証役場で保管する遺言

秘密証書遺言

遺言書の内容を秘密にしたまま封をし、公証役場に存在のみ証明してもらい自ら保管する遺言

 

登記申請の際に遺言書を法務局に提出しますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は事前に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
遺言の偽造や変造を防ぐ目的もありますが、遺言書の形式についても最低限ルールに沿って作成されているか、日付・署名・捺印などを確認してもらう目的もあります。

公正証書遺言の場合は公証人とともに作成するため、この検認手続きは不要です。

また、現在法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度(令和2年7月10日施行)もあり、その保管制度を使用した場合は自筆証書遺言であっても検認手続きは不要となります。 

遺言書での相続登記手続き

では実際に遺言書に基づいて登記申請を行う際の基本事項をご紹介します。
申請に必要な書類は遺言書の内容によって大きく2パターンに分かれるため、それぞれご説明いたします。

(1)法定相続人に相続させる場合

遺産分割協議や法定相続等で相続登記を行う際は、相続人の範囲を特定する必要があります。
そのため原則として被相続人の出生から死亡するまでの全ての戸籍が必要となってきます。
一方遺言による相続登記は遺言によって相続人が判断できるため、必要となるのは被相続人の死亡について記載のある戸籍(除籍)謄本のみです。
その他の提出書類については遺言書が必要となるだけで、遺産分割協議などを行う場合と特に変わりありません。 

また、相続人についての書類も基本的には相続人全員の書類が必須となりますが、遺言書における相続登記では遺言書に記載されている不動産取得者の書類のみで足ります。

遺言による相続登記で提出する書類をまとめると、以下のようになります。 

【登記必要書類】

 ・遺言書(※検認が必要な場合は検認済みのもの)

 ・被相続人の死亡について記載のある戸籍(除籍)謄本

 ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

 ・不動産を取得する相続人の戸籍謄本

 ・不動産を取得する相続人の住民票などの住所証明情報

 ・固定資産評価証明書

 

必要書類が比較的少なくすむことに加えて、遺言書がある場合は登記申請を相続人が単独で行うことができます。
相続人全員が遺言書の内容に異論がない場合は、遺言書の通りに相続手続きを進めた方がスムーズに終わる可能性が高い、ということです。 

(2)法定相続人以外の第三者に遺贈する場合

では、法定相続人以外の第三者に相続財産を遺贈する旨が遺言書に記載されているときはどうなるのでしょうか。
遺贈のケースとしては、例えば子どもや兄弟などの法定相続人がいないときや、被相続人の意向で法定相続人以外に遺産を分配したいときなどがあります。 

この遺贈の場合、受遺者(遺言で指定されている相続財産を受け取る方)が単独で登記申請することができず、遺言者の法定相続人全員もしくは遺言執行者との共同申請が必要となります。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現すべく必要な手続きを担う人のことです。

簡単にお伝えすると、遺言書に基づいた相続手続きを取りまとめる役割があります。実際には相続財産目録の作成や、各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持ちます。

遺言執行者は被相続人が遺言書で指定するか、家庭裁判所で選任申立てを行うことで決定されます。 

つまり遺贈の場合は単独ではなく、複数人での共同申請が原則となるということです。

ただし、財産をもらう受遺者自身が遺言執行者に指名されている場合は、登記権利者たる受遺者及び登記義務者たる遺言執行者として単独で登記の申請が可能です。 

①遺言執行者が選任されている場合

【登記必要書類】

 ・遺言書(※検認が必要な場合は検認済みのもの)

 ・遺贈者の権利証(登記識別情報)

 ・被相続人の死亡について記載のある戸籍(除籍)謄本

 ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

 ・受遺者の住民票

 ・遺言執行者の印鑑登録証明書

 ・遺言執行者の選任を証する書面(審判書など)

 ・固定資産税評価額証明書

 

②遺言執行者が選任されていない場合

【登記必要書類】

 ・遺言書(※検認が必要な場合は検認済みのもの)

 ・遺贈者の権利証(登記識別情報)

 ・被相続人の死亡について記載のある戸籍(除籍)謄本

 ・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

 ・相続人全員の戸籍謄本

 ・相続人全員の印鑑登録証明書

 ・受遺者の住民票

 ・固定資産税評価額証明書 

おわりに

遺言書をもとに相続することで、被相続人のご意向が明確になり手続きもしやすくなるケースが多くあります。

特に今後相続登記が義務化された際は、遺言書を事前に書いておくことが主流となる時代がやってくるかもしれません。

弊所で遺言書に関するさまざまな相談においてもご提案できますので、些細に思えることでもお気軽にご連絡ください。 

(文責:坂本)

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