遺言
自筆証書遺言の書き方 ~自分で遺言書を書く~
はじめに
遺言は、15歳以上で、これを十分に理解できる能力がある人が自分の死後の財産の帰属を決めることのできる法律行為です。その中でも、自分で文字を書くことができ、印鑑を押せば作成することのできる「自筆証書遺言」は最も多くの人が作成している遺言です。
自筆証書遺言とは、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名をを自書し、これに印を押さなければならない」と民法986条で定められている遺言の方式です。
簡単に作成できる反面、法律上の要件を満たしていなければ無効となるリスクも高いので、無効にならない書き方を押さえておきましょう。
自筆証書遺言書を書くときのポイント
1.全文を自書すること
自筆証書遺言は「全文を自分の手で書く」ことが要件です。紙にかかず録音や映像を遺していても「遺言」としては認められません。
しかし、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が平成31年1月13日に施行され、同日以降に自筆証書遺言をする場合には、新しい方式に従って遺言書を作成することができるようになりました。
民法第968条第1項は、自筆証書遺言をする場合には、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書(自ら書くことをいいます。)して、これに印を押さなければならないものと定めています。
改正によって新設される同条第2項によって,自筆証書によって遺言をする場合でも、例外的に、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録(財産目録)を添付するときは、その目録については自書しなくてもよいことになります。自書によらない財産目録を添付する場合には、遺言者は、その財産目録の各頁に署名押印をしなければならないこととされています。
2.日付を書くこと
遺言は、最も新しいものが有効になります。そのため「いつ書かれたものなのか」が非常に重要で、日付を書いていない遺言は無効とされます。遺言に書く日付は必ず「年月日」を具体的に書きましょう。日にちを「吉日」とした遺言は無効となります。
3.署名と押印をする
遺言には必ず署名と押印が必要です。印鑑は法律上は認印等どのようなものでも構いませんが、自分が書いたことをしっかり証明するためにも実印で押印することをおすすめします。拇印も有効とされています。
遺言書本文の署名の下に押印がなくても、遺言書自体が入っている封筒の綴じ目に押印があれば、これでも押印の要件は足りるとされています。
4.修正テープはつかわない
訂正方法は法律で決まっていますので、それ以外の方法で訂正すると無効になる可能性があります。訂正方法については、別途コラムでご紹介します。
5.遺言書は一人ずつ作成する
夫婦だからと言って、ふたりで一つの遺言書を作成することはできません。内容を夫婦で話し合うことは自由ですが、書くときは必ず別々の紙に書きましょう。封筒も別にしておくとよいでしょう。
おわりに
封印された自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認の手続きを受けなければならず、相続人が勝手に開封してはいけません。相続人が間違えてあけてしまわないように、遺言書を入れた封筒には「遺言書」というタイトル、誰の遺言かわかるように遺言者の氏名、「勝手に開けずに家庭裁判所の検認を受けるように」という一言を書いておくとよいでしょう。
(文責:高橋)