相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2023.04.24

相続に関する税金

期限までに相続税が納められそうにないとき~相続税の延納~

はじめに

相続税に限らず国税は、金銭で一時に納付することが原則です。しかし中には、財産を相続したが現金がなく、期限までに相続税が一括で支払えないというケースがあります。その救済措置として延納・物納という制度が設けられています。

延納とは、簡単に言うと相続税の支払いを分割で行える制度です。延納が認められるためには税務署による審査もありますし、相続税に追加して利子税の支払いも必要になります。 

延納の要件

次に掲げる全ての要件を満たす場合に、延納申請をすることができます。

  1.  相続税額が10万円を超えること。
  2. 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
  3. 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。※ただし、延納税額が100万円以下、かつ、延納期間が3年以下である場合は不要。
  4. 延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。 

担保の種類

延納の担保として提供できる財産の種類は、次に掲げるものに限られます。

  1.  国債及び地方債
  2. 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
  3. 土地
  4. 建物、立木、登記される船舶などで、保険に附したもの
  5. 鉄道財団、工場財団など
  6. 税務署長が確実と認める保証人の保証

なお、相続又は遺贈により取得した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人又は第三者が所有している財産であっても、担保として提供することができます。

また、延納の許可はされたものの、担保となる財産が適当でないと判断される場合もあります。その際は、別の財産に変更を求められることになります。

 担保提供関係書類の提出期限

納期限又は納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して提出する必要があります。

ただし、延納申請期限までに担保提供関係書類を提供することができない場合は、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することで、1回につき3か月を限度として最長6か月まで、担保提供関係書類の提出期限を延長することができます。 

延納の許可までの審査期間

税務署より、延納申請期限から3か月以内に許可又は却下の結果が出ます。なお延納担保などの状況によっては、最長で6か月まで延長される場合もあります。 

延納期間および延納利子税

具体的な計算方法は非常に複雑ですので本稿では割愛させていただきますが、延納のできる期間と延納利子税の割合は、納税者の相続税額の計算の基礎となった財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって、おおむね下表のようになります。

不動産等の割合

区分

延納期間

(最高)

延納利子税割合

(年割合)

特例割合

75%以上の場合

①動産等に係る延納相続税額

10年

5.4%

0.7%

②不動産等に係る延納相続税額(③を除く)

20年

3.6%

0.4%

③森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額

20年

1.2%

0.1%

50%以上75%未満

④動産等に係る延納相続税額

10年

5.4%

0.7%

⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く)

15年

3.6%

0.4%

⑥森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額

20年

1.2%

0.1%

50%未満

⑦一般の延納相続税額(⑧、⑨及び⑩を除く)

5年

6.0%

0.8%

⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く)

5年

4.8%

0.6%

⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額

5年

4.2%

0.5%

⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額

5年

1.2%

0.1%

※特例割合は変動がある可能性があります。

特定物納制度(延納から物納への変更)

延納の許可を受けた相続税額について、その後に延納条件を履行することが困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額部分について、延納から物納への変更を行うことができます。これを特定物納といいます。

特定物納の申請をした場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、当初の延納条件による利子税を納付することとなります。

また、特定物納に係る財産の収納価額は、特定物納申請書を提出した時の価額となります。

おわりに

以上、相続税の延納について簡単にご説明させていただきました。

手続きの煩雑さ・利子税の負担が増えることなどを考えると、やはり納税期限までに金銭で一括支払いできることが望ましいかと思います。相続開始の前後を問わず、納税資金にご不安がある場合は、出来るだけ早めに経験豊富な専門家へご相談されることをお勧めいたします。

(文責:尾上)

定額ご依頼フォーム
お問い合わせ