相続コラム

~相続登記~
複雑な事例

2023.05.29

相続登記

胎児が相続人であるときの相続手続

 

はじめに

人は生まれてから亡くなるまで、法律上の権利義務の主体となる資格、いわゆる権利能力を有するとされています(民法第1条の3)。
つまり、代理人等に任せることにはなりますが、生まれたときから親の相続人として遺産を相続することもできますし、不動産の所有者として登記名義人となることもできるというわけです。
ではまもなく生まれる予定のおなかの中にいる赤ちゃんは、もし父親等が亡くなったときに相続人となることができないのでしょうか。 

胎児は相続人になれるのか

まもなく出産予定が近づいているが、不幸なことに父親が事故で亡くなってしまい、相続が発生した。 

このような場合に、胎児は生まれていないため相続人とはならないとすれば、あと数日経てば出生し法定相続の第1順位として相続人となったはずの子どもに不公平であるように思えます。
また胎児の他に先に生まれている兄姉がいるとすれば、兄姉と胎児との間に相続面で大きな差が生まれてしまいます。 

結論からいえば、相続に関しては胎児をすでに生まれたものみなし例外的に胎児も権利能力を有するため、相続人に含まれます(民法第886条第1項)。
注意すべき点としては相続人となるのは無事に出生した場合のみですので、もし死産となってしまったときは胎児は相続人に数えられません。 

胎児が相続人となるときの相続手続きはどう進むのか

先述した通り、胎児は無事に出生するかどうか、実際に生まれるまで不確定です。
一般的には遺産分割協議などの相続手続は、胎児が生まれるまで行わずに待つことになっています。
また相続登記手続について、胎児は相続人とみなされるので胎児を登記名義人とする登記申請自体を行うことは可能ですが、死産の場合は名義人変更手続を行う必要があるため、遺産分割協議等と同じく胎児が生まれるまでは申請しない方が賢明です。 

無事に出生した際はもちろん乳児に遺産分割協議などを行わせることはできないため、未成年の子どもが相続人となるときと同様に、代理人をたてて相続手続を進めていきます。
代理人について、相続に関しては法定代理人である親が代理してしまうと、親の利益と子の利益がぶつかり合う利益相反行為となってしまうので、一般的には相続に関わらない親族の中から特別代理人を選任することになります。
もし適任者がいないときは、弁護士などの専門家を特別代理人として選任することも可能です。 

親族や専門家の中から候補者を決めた後は、家庭裁判所に特別代理人の選任について申立てる必要があります
親族に適任者がおらず、どの専門家を候補者にすればよいか決められない場合は、家庭裁判所側で候補者を挙げて選任してくれます。
申立てについては主に父親や母親などの親権者が行います。
必要書類は基本的には下記のようになりますので、ご参照ください。

 

【主な必要書類】

  ・特別代理人選任申立書 

  ・乳児と申立人の戸籍謄本

  ・特別代理人候補者の住民票または戸籍の附票

  ・遺産分割協議書の案

 

特別代理人の役割とは

ではもし特別代理人になったときは、何を行えばよいのでしょうか。
まず前提として、特別代理人はあくまで相続に関係する手続きにおいてのみ代理権を持つため、相続手続が完了すればその任は終了します。
当たり前ではありますが乳児に関係するその他の手続きについては代理権がありませんので、ご認識ください。 

やるべきこととしては、主として遺産分割協議への出席、相続関係書類への署名・捺印です。
そして一番留意しておくべきことは、乳児の法定相続分を最低限確保する必要があるということです。
勝手に遺産を譲渡したり、法定相続分を下回るような決定をすることはできません。
例えば相続人が配偶者である妻と乳児の2名である場合には、配偶者と乳児で1/2ずつ遺産を相続することになりますので、この法定相続分である1/2は確保するように手続きを進めていきましょう。 

おわりに

今回は民法に規定されている胎児の相続について、概要をご紹介いたしました。
記載の通り、胎児や未成年が相続人となる場合は家庭裁判所への申立てが必要になってくるため、司法書士や弁護士などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。
相続実績多数の弊所は皆様の状況に合わせて包括的に相続をサポートさせていただきますので、ぜひお気軽にご連絡ください。 

(文責:坂本)

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