相続コラム

~相続財産(遺産)~
預貯金等の相続

2023.06.19

相続財産(遺産)

生前に財産管理を家族に託す「家族信託制度」の活用

はじめに

相続対策のひとつとして近年推奨されているのが、「家族信託制度」の利用です。
家族信託とは老後や介護時に備え、自分の所有不動産や預貯金などの財産について、信頼できる家族に財産管理や処分する権限を事前に与えておくことをいいます。 

家族信託制度が注目される理由

近年の日本は少子高齢化が進み、さらに平均寿命も年々長くなっています。
その中で問題視されているのが認知症等の病気になってしまう割合の増加で、将来的には65歳以上の約5人に1人が認知症になると言われています。
認知症やその他の病気に伴い本人の判断能力が低下してしまうと、所有財産の処分や管理において適切な判断ができずに、さらに財産承継において本人の意思も反映しづらくなってしまいます。
そこで家族信託を行い、信頼できる家族に所有財産をどう管理し処分してほしいか事前に託しておくことで、将来のリスクを減らすことができるのです。

家族信託とはどんな仕組みなのか

では家族信託制度の内容についてご説明します。
家族信託に関わってくるのは①委託者、②受託者、③受益者となる方々です。

①委託者

財産を託す方です。
管理方法や処分方法について決定したり、受託者を誰とするのか決定することができます。

②受託者

委託者の意向に沿って実際に財産管理や処分を行う方です。
一方で受託者は「善管注意義務」「忠実義務」「分別管理義務」等の義務も負うことになります。
つまり管理や処分において、徹底した責任を負う立場になるのです。

③受益者

財産を管理・処分していく中で発生した利益を享受する方です。
一般的には、受託者と受益者を同人にする信託が多いです。

 上記のような役割を明らかにし、委託者と受託者の間で信託契約を結ぶことになります。 

家族信託のメリット

(1)委託者が認知症等の病気になっても資産を動かせる

事前に信託契約にて委託者の意向を確認していますので、委託者に判断能力がなくなっても預貯金等を受託者が動かすことができます。
具体的に言うと、預貯金の場合口座名義人に判断能力がないとされた場合に口座が銀行によって凍結されてしまう恐れがあるため、家族信託をしておけば受託者が預貯金を管理でき、委託者の預貯金を医療費や生活費に充てることができるのです。 

(2)成年後見制度より手間や費用がかからない

本人に判断能力がなくなった際の対応として、成年後見制度の利用が挙げられます。
これは裁判所を通して本人に代わって財産管理等を行う成年後見人を選ぶ制度で、成年後見人には親族の他に弁護士や司法書士などの専門家が選任されることがあります。
制度利用のためには非常に多くの書類を集めたり、専門家に定期的に報酬を支払う必要が出てきますので、申立ての手間がかかったり、制度利用が長期に渡ると費用がかさんでしまいます。 

(3)本人の意向を反映しやすい

家族信託では、自分が死亡した後の財産の承継先まで決めることができます。
これは遺言の機能とよく似ていますが、厳格な規定がある遺言と異なり家族信託は「契約」という位置づけになりますので、遺言よりも内容を自由にカスタマイズすることができ、さらに二世代三世代先の承継まで契約で決定することができます。
よって事業を営んでいる方は特に、「事業を誰に継いでほしいのか」など、自分の意向を将来的に反映させやすいという特徴があります。 

おわりに

家族信託は近年注目されている制度であり、家族信託を専門としている司法書士も少しずつですが増えています。
認知症等の問題は今後深刻化していく可能性があり、さらに需要が高まっていくと思います。
こちらの記事を読んで少しでも興味を持たれた方は、家族信託という手段をひとつの選択肢として考え、親族間で家族信託を提案・一考してみることをおすすめします。 

(文責:坂本)

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