遺産分割
相続人がすでに亡くなっていたら~代襲相続~
はじめに
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人となるべき人が、被相続人(遺産を残して亡くなった人)より先に亡くなっている、もしくは相続人の権利を失くしていたりする場合に、その人を飛び越えて下の世代が相続人となることをいいます。
本来相続人だった死亡した人を被代襲者といい、被代襲者の死亡により新たに相続人となった人を代襲相続人といいます。
代襲相続が発生する要因
1 被相続人より前に相続人が死亡している場合
法定相続人である人が、被相続人よりも前に死亡している場合代襲相続人が発生します。
2 相続廃除された人がいる場合
相続廃除とは、相続人(被相続人の兄弟姉妹を除く)が次の行為をした場合に、被相続人が家庭裁判所に請求し、審判や調停によってその相続人の相続権を失わせる制度です。
・被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたとき
・相続人に著しい非行があったとき
これは遺言によってもすることができます。
3 相続欠格された人がいる場合
相続欠格とは、相続人が犯罪行為や不正をした場合に相続権を失う制度です。
・被相続人または先順位若しくは同順位にある相続人を死亡または、死亡させようとしために、刑に処せられた
・被相続人が殺害されたことを知って、これを告発、または告訴しなかった
・詐欺または強迫によって、被相続人が遺言書の作成や、変更することなどを妨害した
・詐欺または強迫によって、被相続人に遺言書を作成させ、変更などをさせた
・遺言書を偽造、変造、破棄、または隠匿した
相続権利の順番
民法で定められた相続人は「法定相続人」といい、被相続人の遺産を相続できる人の順番は次のとおり定められています。
被相続人の配偶者=常に相続人
第1順位=子、子が死亡している場合は孫、子と孫が死亡している場合はひ孫
第2順位=父母、父母が両方とも死亡している場合は祖父母
第3順位=兄弟姉妹、兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪
代襲相続が起こるのは、このうち第1順位と第3順位のみです。相続人の次の世代に発生する効力ですので、第2順位の両親と祖父母がいない場合に曽祖父母への相続権利は発生しないのです。
第1順位の場合
被相続人の子Aが被相続人よりも前に死亡していれば、Aの子供Bが代襲相続人となります。
また、Bもすでに死亡している場合は、Bが被代襲者となりBの子供Cが代襲相続人となります。(このことを再代襲相続といいます)
第3順位の場合
被相続人の両親、祖父母もすでに死亡しており、被相続人に子供がいない場合は兄弟のAが相続人となります。Aも被相続人より前に死亡している場合はAの子Bが代襲相続人となります。
ただしBがすでに死亡していてもBの子が代襲相続人になることはありません。
兄弟姉妹の場合には再代襲相続ができず、兄弟姉妹の子(甥姪)までという制限が設けられています。
上記例と合わせて、本来相続人であった人が死亡以外にも相続廃除・相続欠格に該当する場合も代襲相続の権利が発生するのです。
相続放棄をすると代襲相続はどうなるのか
前述のとおり、代襲相続が発生するのは、相続人の死亡及び相続欠格・廃除によって相続権が失われた場合ですので、相続放棄では代襲相続になりません。
相続放棄した人は、相続開始当初から相続人でなかったとみなされますので、もともと相続権が発生しません。
ですので相続放棄した人の次の世代に相続権が引き継がれることはないのです。
おわりに
代襲相続によって相続人の数が増える場合もあるため遺産分割が複雑化しがちです。また、実際に血のつながりがない養子の場合でも代襲相続は可能です。
相続の手続きを進めるうえでは誰が相続人かということはとても大切です。代襲相続がからむと相続人を見逃すということも発生するかもしれません。遺産の分配について話し合う「遺産分割協議」は相続人全員の参加が必須です。
もし自分だけでは判断に迷うようなケースでは、無理せず専門家への相談も検討しましょう。