相続コラム

~相続に関する税金~
譲渡所得税

2023.08.14

相続に関する税金

法人に不動産で現物出資したとき

はじめに

法人を設立する際、多くの場合は現金を出資し、株式会社では現金と交換に会社の株式を出資者に渡します。しかし車や不動産などの現物で出資することも可能です。
現物出資ができる人は、原則、会社設立の手続きを行う発起人です。発起人には、届け出た資本金額が不足している場合に不足額を支払う義務や、手続きの不備で会社の設立ができなかった場合にその損害賠償責任を負う義務があるため、現物出資ができるとされています。
本稿では、法人に不動産で現物出資した際の課税や、現物出資をしたときの流れなどについてご紹介します。

譲渡所得税の課税対象になる

法人に現物出資した場合、資産の譲渡となり、譲渡所得税の課税対象とされます。
この場合の譲渡収入金額は、出資した不動産の時価ではなく、現物出資により取得した株式や出資持分の時価となります。ただし、その価額が出資した不動産の時価の2分の1未満の場合は、出資した不動産の時価が収入金額とみなされます。
つまり、2分の1を下回らない範囲で時価より低い価格で出資するとなったら、その分税金は安く済むか、購入時の金額より安ければ税金はかかりません。
ただし次にご説明しますが、自分で勝手に金額を決められるではないので、不当に安い価格で出資することはできません。

現物出資する際の流れ

現物出資の一般的な流れは次のとおりです。

1.時価の調査

原則は発起人が調査しますが、現物出資したものの総額が500万円を超えている場合や価額が相当であると弁護士・税理士等の証明を受けていない場合などは、裁判所が選任した調査役(検査役)に依頼する必要があります。

2.定款への記載

現物出資をする場合、現物出資する発起人の氏名と住所・出資する現物の詳細・現物の価額・出資者に割り与えられる株式の数を定款に記載します。

3.調査報告書の作成

 現物出資したものの価格が適正か・法人への引き継ぎが完了しているかなど、発起人以外の人(通常、裁判所に選任された調査役や会社設立時の取締役)が調査し、報告書を作成します。

4.財産引継書の作成

発起人は株式の割り当てを受けたらすぐに現物出資する資産を引き渡し、財産引継書を作成します。

現物出資のメリット・デメリット

現物出資の主なメリットには次のようなものがあります。

1.資金がなくても法人を設立できる

まず大きなメリットのひとつとして、資金がなくても発起人になれる=法人を設立できることが挙げられます。現金がなくても所有している資産により法人を設立できるので、個人が法人化などを考えている場合には有効な手段となります。

2.資本金を増やせる

資本金を増やせることもメリットのひとつです。現金を用意する必要がない現物出資で資本金を増やすハードルも低くなります。対外的に資本金が大きい方が法人の信頼度が高くなりますので、法人化する際の有効な手段と言えます。

3.節税効果

1つあたり10万円を超えるものは、固定資産として帳簿に登録されます。固定資産はその資産ごとに設定された年数で減価償却をしていくため、毎年減価償却費として経費にすることができます。現金での出資の場合は、そこから資産を購入したり費用を支払ったりしない限り経費になりませんので、すぐに減価償却費にできる現物出資は、その分節税効果があると言えます。

一方、現物出資の主なデメリットには次のようなものがあります。

1.手続きが煩雑

 まず挙げられるデメリットが、手続きに手間がかかることです。現金出資にくらべて定款への記載事項が増え、調査報告書や財産引継書などの作成書類も多くなります。また所有するのに登記や登録が必要な資産については、所有権の移転手続きを行う必要もあります。そのため、現金出資よりも設立まで時間がかかってしまいます。

2.資本金額よりも現金が少ない状態になる

 現物出資をした場合、設立当初は資本金の金額よりも現金が少ない状況が続きます。そのため収入より支出が多い時期が続くと、すぐに資金が底をついてしまう可能性があります。現物出資で設立する場合には、設立後の資金繰り計画を正確に立てておかなければいけません。

おわりに

以上、法人への現物出資について簡単にご説明しました。現物出資は、資金が少ない個人でも法人を設立することができるため、法人化することにメリットがある個人事業主の方などには有効な手段です。ただし譲渡所得税の課税や手続きの煩雑さがありますので、ご検討される場合は、是非経験豊富な専門家へご相談されることをお勧めいたします。
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