相続財産(遺産)
ビットコインなどの仮想通貨の相続手続き
はじめに
相続税の課税対象として考えられるもののひとつに、仮想通貨(暗号資産)があります。
近年ニュースで取り上げられる機会も多く、知識としてご存じの方や実際に利用されている方も年々増加傾向にあるかと思います。
今回は仮想通貨の相続についてご紹介します。
仮想通貨とは?
仮想通貨は令和2年5月1日に施行された法律により、正式には「暗号資産」と呼ばれます。
仮想通貨と呼ばれるように通貨としての実体はなく、電子データ上でのみやり取りされるもので、特定の国家による裏付けのない(価値の保証がない)通貨です。
一方で、日本円や米国ドル等の法定通貨と相互に交換できる、一般的には財産的価値のあるものとして認められている財産のひとつです。
2009年にビットコインの運用が開始され、それ以降仮想通貨の銘柄(種類)も大幅に増加しています。
ビットコインの他に有名なものですと、イーサリアムやリップル等が挙げられます。
その資産価値の変動に着目し投資運用の手段のひとつとして利用している方が多いのではないでしょうか。
仮想通貨の相続手続きはまず調査から
仮想通貨の相続で一番労力を要するのが、亡くなった方の仮想通貨を調査することです。
場合によってはスマートフォン一台で簡単に管理できるので、当事者本人しか知り得ないところに仮想通貨があったり、ログインパスワードがわからず何もできなくて慌ててしまうという事態も考えられます。
亡くなった方が仮想通貨を保有しているかどうかがわからない場合、まず最初に故人の身の回りにある書類や物品などから特定を始めましょう。
例えば銀行口座の入出金履歴を確認したり、郵便物を探したり、スマートフォンのアプリケーションを確認します。
具体的な相続手続きは何をすればいい?
保有していた仮想通貨が少しでも特定できれば、次に行うのが関係機関へ該当者が亡くなった旨を連絡することです。
基本的には株式の相続手続きと似ているのですが、仮想通貨の手続きは日本国内の取引所(仮想通貨交換業者)が関わっているか、海外の取引所が関わっているかで大きく異なってきます。
(1)日本国内の取引所を利用していた場合
取引所を通じて取引を行っていた場合、相続手続きについては取引所に連絡をし確認することになります。
特に金融庁の登録を受けている取引所であれば相続手続きについて明確に決められていますので、案内に従って手続きを進めていけばよいだけになります。
流れの一例を挙げると、まず亡くなった方の死亡について連絡をし、取引所の案内に従い戸籍等の相続関係書類を提出します。
主に求められるのは相続関係がわかる戸籍や死亡の事実がわかる住民票の除票、相続人全員の印鑑証明書等になります。
提出書類に不備がなければ死亡日時点の仮想通貨の価値をもとに、売却代金が代表相続人の指定口座に払い戻される、という流れです。
(2)海外の取引所を利用していた場合
海外の取引所を利用していた場合、セキュリティの観点からIDやパスワードとは別に、プライベートキー(秘密鍵)を求められる可能性があります。
また外国語を駆使して手続きを進めなければならない場面もあるため、国内の取引所を利用していた場合よりも時間と労力がかかってしまいます。
相続税と仮想通貨
冒頭でお話しした通り、仮想通貨も相続税の課税対象となる資産です。
一般的には相続開始日(亡くなった日)時点の資産価値を基準として税額が算出されることになります。
注意しなければならないのが、この相続税は相続人が仮想通貨を引き出せない状況であっても課税される可能性があるということです。
つまり、調査が上手くいかなかったり相続による仮想通貨の払い戻しがスムーズにいかず相続人に実際に仮想通貨の利益が及ばない段階であっても、相続税が課税されることがあるというのです。
いざというときに慌ててしまわないよう、生前から保有している仮想通貨の詳細は近しい親族と共有しておくことをおすすめします。
おわりに
仮想通貨の相続において大切なのは、前述の通り保有している仮想通貨について可能な限り共有しておくことです。
仮想通貨自体が運用開始となってまだ年月も浅いものになりますので、今後よりよい相続方法が生まれる可能性もありますが、一番着手しやすいのは親族間での情報共有かと思います。
また、仮想通貨に強い弁護士や司法書士等の専門家も少しずつ増えていますので、お困りの際は専門家を頼ることもひとつの手です。
(文責:坂本)