相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2024.01.08

相続に関する税金

遺留分侵害額請求(遺留分滅殺請求)を行ったときの税申告

はじめに

民法では、被相続人の財産のうち相続人が最低限取得できる割合(遺留分)を保障しています。この遺留分を侵害された人が,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求することを、遺留分侵害額請求または遺留分減殺請求と言います。(遺留分についての詳細は、別コラムにてご紹介しております。)

本稿では、遺留分減殺請求が成立した後に必要な対応についてご説明します。 

取得財産に変動が生じた場合は相続税の申告が必要

相続税は相続財産の案分割合で納める税額が決定するので、遺留分減殺請求により取得する相続財産に増減があった場合には、その取得割合に応じて納める相続税額を再計算し、税務署に申告する必要があります。その際に行う申告手続きは、納める相続税が増加するか減少するかで異なります。

また、申告には期限があり、和解が成立してから4か月以内に相続税手続きを完了させなければなりません。 

相続財産の取得金額が減少した場合は更正の請求

相続財産の取得金額が減少する場合には、納める相続税額も減少するため、すでに税務署に納めている相続税の還付が受けられます。還付を受ける手段としては、税務署に更正の請求書を提出し、請求内容が認められた場合に相続税が還付されます。

更正の請求書の提出をする際の注意点は以下の通りです。

1.更正の請求の対象となる相続人が複数いる場合には、各相続人が更正の請求書を作成し、税務署に提出しなければならない。

2.遺留分減殺請求の和解の調書や合意書等、更正の請求をするに至った経緯が確認できる書類の提出が必要。(複数の相続人が更正の請求書を提出する際は、それぞれに書類添付が必要。)

3.相続税の更正の請求書は、還付されるまでに時間がかかる。(通常14か月後)

4.各相続人が提出した申告書や更正の請求書の計算が異なっている場合、還付が保留されるので、全員の申告内容が正しくなければならない。

以上の事から、更正の請求にはかなりの時間と手間がかかることを認識して臨む必要があります。 

相続財産の取得金額が増加した場合は修正申告

相続財産の取得金額が増加した場合には、納める相続税の税額も増加するため、相続税の修正申告書の提出と追加の納付が必要です。

修正申告書の提出をする際の注意点は以下の通りです。

1.遺留分減殺請求が成立した場合には、その翌日から4か月以内に修正申告・納税を行えば延滞税は発生しない。(逆に言えば、4か月を超えてしまった場合には延滞税が発生するので注意。)

2.遺留分減殺請求の和解の調書や合意書等、経緯が確認できる書類の提出が必要。(通常の修正申告では義務ではない。) 

おわりに

以上、遺留分減殺請求が成立した場合の相続税申告について簡単にご説明いたしました。

遺留分減殺請求による更正の請求や修正申告は、通常の手続きよりも煩雑ですし、専門的な知識が必要になります。他の相続人の遺留分に影響があるような遺言書がある場合などは、早めに経験豊富な専門家にご相談いただいた上で、計画的に対応していくことをお勧めします。

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