相続登記
遺産分割調停・裁判による登記~遺産分割協議がまとまらないとき~
はじめに
遺産分割協議で相続財産の分割方法を決める場合、相続人全員が参加し、全員が協議内容について合意する必要があります。
しかし相続人間で意見が食い違ってしまったり、トラブルが発生してしまい協議がまとまらないケースもあります。
そのような場合に活用できるものが、家庭裁判所による遺産分割調停や遺産分割裁判です。
今回は遺産分割調停や遺産分割裁判を行った際の相続登記についてご紹介します。
遺産分割調停や遺産分割裁判はどんなもの?
「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。
(民法第907条2項)」
相続人間だけでは協議がまとまらないとき、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをするという手段があります。
申立ては相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に行います。
遺産分割調停では、まず裁判所が相続人の事情を聴いたり、相続財産の鑑定を行うなどして各々の事情や相続財産の現状を把握します。
その上で各相続人の意向を聴き、中立な立場をもって解決案の提示や助言を行い最終的に相続人全員が合意することを目指します。
調停が無事整えば調停調書が発行され、この調書をもとに相続登記などの手続きを進めることになります。
調停手続きを経ても話し合いがまとまらない場合は遺産分割裁判が開始されることになり、裁判官が一切の事情を考慮し審判をすることになります。
簡単にいえば、裁判官が遺産分割の内容について判断(審判)してくれるのです。
申立てにあたっては、主に下記の書類が必要となります。
【申立てに必要な書類】
・亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票又は戸籍附票
・遺産に関する証明書(不動産登記簿謄本、預貯金通帳の写し又は残高証明書等)
※上記の書類以外にも、事情によって必要になる書類があります。
調停や裁判で分割方法が決まった時の登記手続き
では実際に調停や裁判で分割方法が決まった時の登記手続きですが、まず登記申請に必要な書類は下記のようになります。
【登記申請に必要な書類】
・遺産分割調停調書謄本(正本である必要はありません)
・住民票(不動産を取得することとなった方のもの)
・被相続人の死亡を証する書面(除籍謄本など)
※被相続人の死亡年月日が調停調書に記載されている場合には不要です。
・被相続人の最後の住所を証する書面(住民票の除票又は戸籍の附票)
※調停調書に記載された被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が一致していな
い場合に必要となります。
・固定資産評価証明書
・委任状(司法書士に依頼する場合)
基本的な相続登記では、亡くなられた方(被相続人)と相続人の関係を証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本すべてと、相続人の現在戸籍が必要となりますが、調停等を行った場合はすでに調停手続きの際に確認しているため不要となります。
また、遺産分割調停による相続登記は、原則として不動産を取得する相続人からの単独申請となります。
他の相続人に協力を頼む必要はないので、申請手続きが比較的楽に済むというメリットはあります。
おわりに
遺産分割の方法として遺産分割協議に基づいて分割することがよくあるケースですが、相続人それぞれの事情があり、スムーズに進まないことも可能性としてゼロではありません。
遺産分割協議書を作成する際に司法書士等の専門家に折衷案を作成してもらうのもひとつの手ですが、どうしてもまとまらないときは裁判所の力を借りるのも良い手段です。
なるべく心労を減らし、相続人の皆様が納得した上で相続手続きを行うために、ぜひ活用してください。
(文責:坂本)