相続コラム

~相続登記~
複雑な事例

2022.07.26

相続登記

過去に遺産分割協議が成立しているが、関係書類を失くしてしまったとき

はじめに

相続が開始した際、遺産分割方法の一つとして遺産分割協議があります。

相続人全員の参加が必要であり、全員の実印での押印と印鑑登録証明書も必要となります。

しかし、相続登記手続きには現在期限などはなく、遺産分割協議は行ったが登記申請手続きを怠ってしまい、月日が経ってしまった、というケースもあります。

(ご存じの通り今後2024年を目途に相続登記手続きが義務化され、期限が法定されます。)

 

では、もし遺産分割協議が整い遺産分割協議書を作成したにもかかわらず、時間をおいた結果関係書類を紛失してしまったときはどうすればよいのでしょうか。

 

 

遺産分割協議書等の関係書類を紛失すると後々大変なことに…

先述の通り、遺産分割協議によって遺産の分割方法を決定する場合、必須となるのが遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書です。

(相続人全員の押印によって、協議が真正に行われたことを示すため)

 

まず前提として遺産分割協議書を作成する際は、相続人全員分の同内容の遺産分割協議書を作成・押印し、各相続人が協議書の原本を有している状況にすべきです。

原本は1通で、コピーをその他の相続人に渡すことは後々トラブルにつながる可能性があるので、極力避けるようにしましょう。

 

しかし、関係書類の原本等を紛失してしまったのであれば仕方ありません。

考えられる紛失のパターンと、その際の対応についてご紹介します。

(1)遺産分割協議書の原本そのものを失くしてしまったとき

まず一番大事な遺産分割協議書の原本を紛失してしまった場合、残念ですが再度相続人全員に連絡を取り、遺産分割協議を開催し、協議書の再作成が必要となります。

コピーがあっても登記申請には使用できません。

 

(2)遺産分割協議書の原本を紛失し、さらに相続人の一人が亡くなってしまったとき

原本を紛失し、さらに相続人の一人が亡くなってしまったため、当時の相続人で遺産分割協議を再度開催することができない場合はどうでしょう。

原則として遺産分割協議が整わない状況で相続人の一人が途中で亡くなってしまったときは、数次相続が発生することになります。

詳細は別コラムでご紹介しておりますが、亡くなった相続人の一人について相続人となり得る方々と共同して新たに遺産分割協議を行う必要があるため、関係者が増加することになります。

 

(3)添付する相続人の印鑑登録証明書を一部紛失したとき

紛失したものが協議書に押印した印鑑登録証明書であるならば、そこまで労力を割かれないかと思います。

再度印鑑登録証明書を発行してもらうよう、該当の相続人に掛け合ってみましょう。

 

(4)当時の相続人が亡くなってしまい印鑑登録証明書が取得できないとき

遺産分割協議書自体はあるが、印鑑登録証明書がなく、該当の相続人が途中で亡くなってしまった場合です。

印鑑登録証明書は当事者が死亡してしまった際は発行することができません。

遺産分割協議は完了しているため、印鑑登録証明書の添付に代えて、協議が真正に成立したことの上申書を作成する必要があります。

この上申書には亡くなった該当の相続人の相続人全員で作成する必要があるため、さらに連絡を取るべき関係者が増えていきます。

 

(5)相続人の一人が当時押印した実印から改印したとき

月日が経過することに弊害として、相続人の一部が当時遺産分割協議書に押印した実印を改印してしまうケースもあります。

古い実印の印鑑登録証明書があればよいのですが、持っていない場合は新しい実印で作成済みの遺産分割協議書の古い実印の隣に押印し、新しい実印の印鑑登録証明書を添付します。

もしくは遺産分割協議を再度開催するということも一つの手段ではありますが、相続人が意見を変えてしまい協議の内容を変える結果となる可能性もありますので、基本的には新しい実印で押しなおす方がよいかと思います。

 

 

おわりに

相続登記に必要な書類を紛失してしまった場合、再度相続人全員に連絡を取ったり書類を集めなおしたり等、時間がより一層かかってしまうことになります。

場合によっては順調に進むはずの手続きがトラブルによって長引いてしまうことや、自分が本来受け取ることができた遺産を手放すことになるかもしれません。

遺産分割協議書や印鑑登録証明書などの大事な書類は、最低限すべての相続手続きが完了するまで金庫のような安全な場所に保管しておくことを推奨します。

 

(文責:坂本)

 

 

 

 

 

 

 

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