相続コラム

~相続登記~
複雑な事例

2023.03.13

相続登記

死因贈与の仮登記とは?生前の仮登記で二重譲渡対策を!

はじめに

死因贈与契約とは、贈与者(財産を渡す人)と受贈者(受け取る人)の間で、「贈与者が亡くなったら特定の財産を受贈者に渡す」といった契約を結ぶことをいいます。

贈与契約に贈与者の死亡を原因として効力が発生する条件が付与されているということです。

もし特定の方に自分の財産を渡したい場合は、生前に死因贈与契約を結んでおき備えることも相続手続のひとつの手段です。

今回は死因贈与契約の特徴や、死因贈与契約を守るための仮登記手続についてご紹介します。 

死因贈与契約と遺贈の違いは?

死因贈与契約と似ている相続方法として、遺贈があります。

遺贈は亡くなった方の遺言書に基づき、法定相続人以外の第三者に特定の財産を贈与することをいいます。

民法554条には「死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定められており、遺贈の規定が死因贈与契約にも部分的に適用されることがわかります。

 

大きな違いとしては、遺贈は遺言書によって贈与者が単独で贈与内容について決定することができますが、死因贈与契約は契約内容について贈与者と受贈者双方の合意が必要となります。

また、遺贈の場合は遺言書に基づいて贈与を行うため、遺言書の厳格な書式を守る必要がありますが、死因贈与契約は厳格な書式は法定されていません。場合によっては口頭でのやり取りでもその契約が成立するケースがあります。 

死因贈与契約は撤回できるのか

死因贈与契約は先ほどもお伝えした通り双方の合意の下成立しますが、契約を結んだ後で契約を撤回することはできるのでしょうか。

結論からいいますと撤回については遺贈の規定が準用されるため、原則として契約の撤回は可能です。

しかし撤回することができないケースもあるため、いくつかご紹介します。

(1)負担付死因贈与契約で受贈者が全部又はそれに類する程度の履行をした場合

負担付とは、贈与者(財産を渡す人)が受贈者(受け取る人)に何らかの義務や負担をしてもらうよう約束することをいいます。

例えば受贈者に贈与者と同居し介護してもらうよう約束したり、住宅ローンの返済をお願いしたりするケースが多いかと思います。

負担付死因贈与契約の場合、受贈者は原則として贈与者が亡くなる前にその義務や負担を全うし、贈与者が亡くなった後契約の効力が生じます。

この負担の全部又はそれに類する程度の履行がされている場合、原則として贈与者は契約を撤回することができません。

 

(2)贈与者が亡くなっている場合

原則として贈与者が亡くなった後は死因贈与契約を撤回することはできません。

例外的に書面によらない贈与契約であり、履行が未完了であるときは相続人において撤回が可能な場合もあります。 

死因贈与契約の仮登記で二重譲渡対策を

死因贈与契約を締結した際は、死因贈与契約の仮登記を行うことができます。

仮登記を行うことで登記簿上に受贈者の名前が死因贈与の「権利者」として記載されるので、第三者が登記状況を確認した際に該当の不動産に死因贈与という始期付贈与が付されていることがわかります。

よって例えば第三者が該当の不動産を売買しようとした際に、「将来不動産を受け取ることになっている者がいる」という牽制ができるのです。

注意点として、あくまで「権利者」として登記されるので、仮登記の時点では「所有者」として対抗することはできません。

可能性は非常に低いですが、あくまで仮の登記であり、第三者が所有権移転登記を一切できなくなるということではない点にご注意ください。  

死因贈与契約を行うときにやっておいた方がよいこと

①契約書は公正証書で作成する

死因贈与契約の仮登記を行う際、通常の登記申請と異なり、登記権利者(受贈者)が単独で登記申請を行うことができます。

この場合、登記義務者である贈与者の承諾書と印鑑証明書が必要となります。

一方で、公正証書によって死因贈与契約が締結され、さらに、契約書に仮登記の単独申請に関する認諾条項を記載しておけば、当該公正証書をもって贈与者の書類が不要となり、単独で始期付所有権移転仮登記を申請することができます。

よって、死因贈与契約を締結する場合は、将来の本登記の手続を見越して、公正証書で作成することをおすすめします。

 

②死因贈与契約の執行者を指定しておく

遺言執行者と同様に、死因贈与においても執行者を指定することができます。

契約書にその旨を記載しておくことで、各相続人の委任状等の登記必要書類を準備することなく、執行者と受贈者で登記申請ができるようになります。

執行者と受贈者を同人にすることもできますので、その場合は単独で登記申請が可能です。

相続人と連絡が取れなかったり、関係があまり良くないケースもあるかと思いますので、トラブルを避けるために執行者は指定しておくことが吉です。

 

よって死因贈与契約を行う際は将来の手続きをスムーズに進めるために、公正証書で契約書を作成し執行者を指定しておくことをおすすめします。 

おわりに

今回は死因贈与とその仮登記についてご紹介しました。

負担付死因贈与契約や仮登記手続きなどの生前対策を活用していくことは、相続方法のひとつとして非常にメリットがあります。

自分に合う方法に悩まれた際は、一人一人の事情にあわせた適した相続方法を提案させていただきますので、ぜひ専門家にご相談ください。

(文責:坂本)

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