相続手続中に相続人が亡くなったとき ~数次相続の発生~
はじめに
親族が亡くなり相続が開始した際、遺産分割協議や不動産名義変更等の相続手続きを進めることになります。
しかし、相続手続きを行っている最中に相続人の一人が協議などが整わない状況で亡くなってしまうことがあります。
このようなケースを「数次相続」と言います。
遺産分割協議には特に期日がないため、協議を先延ばしにしてしまうことで相続人であった者が亡くなり、その者に関する相続も発生するのです。
つまり一次相続、二次相続、三次相続…というように、相続手続きが重なっている状況をイメージするとわかりやすいかもしれません。
今回は、数次相続が発生した際の相続手続きはどのように進むのか、ご紹介します。
数次相続と代襲相続のちがい
まず、数次相続と混同しやすいのが「代襲相続」です。
簡単に言うと、代襲相続は被相続人が亡くなる前に相続人となるべき者が亡くなっていること、数次相続は被相続人が亡くなった後に相続人となるべき者が亡くなることです。
わかりやすく図で説明します。
①代襲相続の場合
図の相続関係であれば、父が亡くなる前にすでに三男が亡くなっていた状況が代襲相続です。
代襲相続の場合は本来相続人になるはずであった者の直系卑属(子や孫)が相続権を承継するため、三男の子A、子Bが三男の相続権を承継し相続人となります。
三男の妻は直系卑属ではないため、相続人にはなりません。
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【状況】
父:令和元年死亡
三男:平成27年死亡
※三男の相続手続きはすでに完了している
相続人となる者(遺産分割協議に参加必須)
→母、長男、次男、子A、子B
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②数次相続の場合
先述の通り、遺産分割協議等が未完了であるときに相続人であるはずの三男が亡くなってしまった場合、1次相続として父の相続、2次相続として三男の相続が発生します。
基本的な流れとして、まず父の相続分を配偶者や子どもに割り振り、その後三男に振り分けられた父の相続分を三男の妻や子A、子Bで分ける、といったものです。
よって数次相続の場合、亡くなった三男の相続人となるべき者が遺産分割協議等に関わってくることになります。
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【状況】
父:令和元年死亡
三男:令和2年死亡
※父の相続について遺産分割協議や相続登記は行っていないor終わっていない
相続人となる者(遺産分割協議に参加必須)
→母、長男、次男、三男の妻、子A、子B
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上記の例は2次相続のみ発生した場合ですが、相続人が複数亡くなってしまうと3次相続、4次相続…と相続範囲が広がり、相続に関わってくる人数が増加してしまいます。
相続分も分割を繰り返し、非常に細かな割合でひとつの財産を分け合ったり等、手続きは複雑化していきます。
おわりに
今回は数次相続についてご紹介しました。
相続手続きを怠ってしまうと遺産分割協議などに係る相続人が増え続け、更に相続人が途中で亡くなり数次相続が発生するとより一層手続きは複雑化していきます。
可能な限り早期に手続きを行い、数次相続を発生させないことが大切です。
相続登記の義務化に向けて、相続について専門家に事前に相談しておいたり、親族とのこまめに連絡をとっておくなど、できることから始めましょう。
(文責:坂本)