相続登記
名寄帳とは?所有不動産が一覧でわかる便利な書類
はじめに
相続登記をいざ始めるとなったとき、一番最初に調査しておきたいのが被相続人(亡くなられた方)が所有していた不動産はどこに、どのくらいあるのか、ということです。
被相続人の所有不動産はもちろん相続登記の対象となりますし、後々「あの不動産も所有してたの!?」と慌てないように、できれば漏れなく少ない回数で相続登記手続きを終わらせたいものです。
そんなときに役立つ書類のひとつが名寄帳(なよせちょう)です。
名寄帳を取得するメリット
名寄帳、と聞いても普段あまり目にしない書類かと思います。
この書類の便利なところは、該当者の所有不動産が一覧でわかるということです。
固定資産税を課税するため各市役所が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめており、該当の人が持っている不動産をまとめて確認することができます。
被相続人の親族であるからといって、所有していた不動産を完全に把握しているという人はほとんどいないに等しいと思います。
そんな時に被相続人が持っていた不動産を一覧で確認できる名寄帳は、非常に役に立ちます。
所有不動産の詳細を確認する方法として固定資産評価証明書なども利用できますが、こちらはそもそも該当の不動産がわかっていないと請求すらできませんので、所有者の情報を基礎として取得ができる名寄帳には大きなメリットがあると言えるでしょう。
また、名寄帳では固定資産税や都市計画税が非課税の不動産も確認することができます。
一般的に毎年郵送で納税義務者のもとへ届く納税通知書には、課税不動産のことしか記載されていません。
私道、農地や山林、共有持分があり結果として非課税となっている不動産も相続の対象になりますから、名寄帳はこの点でも役に立ちます。
名寄帳取得時の注意点
名寄帳取得のメリットを前述しましたが、一方で注意すべき点もあります。
まず、名寄帳は同じ市区町村管轄の不動産しか記載されていません。
あくまでひとつの市区町村内にある固定資産税課税不動産について記載されているのみですので、他の市区町村に所在する不動産については別途請求しなければいけません。
また、名寄帳は各市区町村が固定資産税の納税義務者をわかりやすく管理するための書類であるがゆえに、毎年1月1日時点の情報を基礎として作成されています。
その年の5月に取得しようが、10月に取得しようが、記載してある不動産は1月1日時点の情報です。
つまり1月1日時点では所有していなかったが、それ以降で被相続人が所有することになった不動産は記載されていないのです。
この場合、名寄帳のみの情報では相続不動産に漏れがありますので、もし1月2日以降に被相続人が新たに不動産を所有するようなことがあれば、新たに所有した不動産の権利証等別の書類を使って相続不動産を確定していく必要がありますので注意してください。
名寄帳を取得する方法
では実際に名寄帳を取得するにはどんな手続きが必要なのでしょうか。
まず名寄帳を取得できる者は下記の通りです。
【取得できる者】
・固定資産税の納税義務者本人
・相続人
・代理人
・その他利害関係人
次に取得するために必要な書類についてご紹介します。
本人は交付申請用紙と運転免許証などの本人確認書類があれば取得できますが、その他の者は取得する資格があるかどうかを証明する書類が必要となります。
必要書類は各市区町村によって若干異なることもありますので、該当の市区町村での詳細を事前に調べておくとよいでしょう。
【取得に必要な書類】
・交付申請用紙
・申請人の本人確認書類
・被相続人との関係がわかる戸籍や遺産分割協議書等
→相続人が申請する場合
・委任状
→代理人が申請する場合
窓口での申請以外にも、郵送で申請を行うこともできます。
名寄帳を送付してもらうために返信用封筒を添え、必要書類とともに該当の市区町村に送付しましょう。
さらに発行の手数料ですが、市区町村によって若干異なりますが、基本的に1通300円前後が必要です。
郵送の場合は定額小為替を同封すれば手数料として処理されますので、郵便局で準備をしておきましょう。
おわりに
前述の通り、名寄帳は同一市区町村に所在する被相続人の所有不動産を一覧で確認することができる便利な書類です。
司法書士などの専門家に登記を依頼する際に提示すれば、登記手続きを進める上で非常に助かります。
もちろん名寄帳の取得を相続人の方々の代わりに司法書士が行うこともできますので、一括で手続きを任せたいという方はぜひお気軽にご依頼ください。
(文責:坂本)