相続財産(遺産)
事業用不動産や賃貸業用不動産の相続
はじめに
事業や賃貸業に用いるために所有していた不動産のことを、名前の通り事業用不動産、賃貸業用不動産と言います。
被相続人(亡くなった方)が自分の居住用に所有していた不動産と異なり、収益を得ることを目的に所有していた不動産については相続において特例が決められています。
相続税課税価格を引き下げる特例が使える
事業用不動産とは、主に店舗、事務所などの事業目的で利用される不動産をいい、賃貸業用不動産は不動産を他者に賃貸し収益を得る目的で利用される不動産をいいます。
そして相続人に事業や賃貸業を承継させることを前提として該当不動産を相続させる場合、事業用不動産には特定事業用宅地等の特例制度を、賃貸業用不動産には貸付事業用宅地等の特例制度を利用することができるのです。
特定事業用宅地等の特例とは、条件に該当する不動産において相続税課税価格を引き下げることができるもので、その面積のうち400平方メートルまでの部分の評価額を80%減額することができます。
また貸付事業用宅地等の特例では、相続税課税価格についてその面積のうち200平方メートルまでの部分の評価額を50%減額することができます。
この特例は、遺族が事業を引き継ぐにあたり、事業収益で生計を立てている遺族の生活を守るために設けられたものです。
特に事業用不動産や賃貸業用不動産は他の不動産よりも課税価格が高いことが一般的ですので、莫大な相続税が遺族に課されないように配慮されています。
適用条件としては、相続税の申告期限まで引き続き事業を営んでいることや、申告期限までに不動産を引き続き保有していること等が挙げられます。
不動産登記費用は経費で落とせるのか
事業を営む上でよくついて回るのが、「この出費は経費で落とせるのか」という疑問です。
相続登記を行う場合、登録免許税や司法書士への依頼費用を支払う必要が出てきます。
これらの登記に必要となった費用は事業の経費として落とせるのかどうか、ということは相続した事業主にとって重要な話です。
収益に係る不動産の相続登記費用については取り扱いが変更され、平成17年1月1日以後の相続により取得した事業用不動産・賃貸業用不動産の登記費用については、原則として必要経費にとして扱ってよいものとなりました。
よって事業(農業などがイメージしやすいでしょうか)や賃貸業に用いる不動産について相続登記を行う際にかかった費用については、所得税申告時に経費として計上することができるのです。
おわりに
被相続人の事業承継・賃貸業承継は、一般的な相続手続きよりも考慮すべき点が多くなります。
先述のような特例もありますので、可能な限り制度を利用して、より負担のないように上手く相続していくことが重要です。
もしご両親が個人事業や賃貸業を営むなど、収益を目的とした不動産を所有していた場合はぜひお気軽に専門家にご相談ください。
皆様の相続における最適解を一緒に考えさせていただきます。
(文責:坂本)