相続コラム

~遺産分割~
法定相続

2022.06.27

遺産分割

遺産分割協議はやりなおすことができる?  

はじめに

亡くなられた方の相続財産は、特別な定めや協議がなければ、民法で決まった法定相続分通りに相続します。

例えばお父さんとお母さん、そしてお子さん二人の4人家族でお父さんが亡くなられた場合の法定相続分は、お母さんが4分の2、お兄さんが4分の1、弟さんが4分の1の割合です。お父さんが残した不動産も車もこの割合により、三人の方で共有することになります。

それを遺産分割により、持ち分の比率を変えたり(例えばお兄さんが10分の8を取得するとか)、特定の物を特定の人物の所有(不動産はお母さん、車はお兄さん等)にしたりするのが、遺産分割です。ではその遺産分割協議はやり直すことができるでしょうか? 

そもそもどういう状況で遺産分割協議のやりなおしの話が?

先程の家族構成をもとに考えてみます。

例えばお母さんが不動産、お兄さんが車、弟さんが家電製品全部、といった遺産分割をしたとします。

しかし、お兄さんが取得したと思われた車をお父さんが生前にAさんに売却していたら?

その車の所有権はAさんにあるので、お兄さんは当然車を取得できません。

それどころか相続人は亡くなったお父さんの義務も相続しますので、車の引渡しの義務まで生じます。

お兄さんとしては遺産分割協議をやり直して、車に代わる財産を取得したいと思いますよね?

ここで本題の遺産分割協議をやり直すことが出来るという話になります。

遺産分割協議をやり直すには?【法定解除と合意解除】

結論から言うと遺産分割協議をやり直すには合意解除をする場合を除き、基本的にはやり直しは出来ません。

民法の契約では原則である法定解除は基本的には出来ないということになります。

合意解除と法定解除の違いですが、合意解除は協議した当事者全員で文字通り解除の合意をすることです。当事者全員が解除でいいと言っているので、それを認めるということです。

ちなみに遺産分割協議を裁判所を通して行った場合は合意解除はできません。

裁判を当事者が勝手に覆すべきではないという価値判断があるからです。

で、法定解除はというと、例えば決まった期日までに物を引き渡さない場合、賃料や貸金を弁済しない場合等は債務不履行により法定解除できます(細かい要件や違いは多々あります)

また、契約や協議の内容に重大な瑕疵がある場合には、その契約等へ向けられた意思表示は本人の意図と違うものになるので、他の当事者の意思とは関係なく一方的に解除できるのが法定解除です。

遺産分割協議で決まった内容が、一部の相続人に不利益があるから、一部の相続人が債務を履行しないからと言って、法定解除を認めてしまうと関係ない他の相続人も含めて協議をやり直すということになってしまいます。

何度も協議を蒸し返すことになってしまうわけですね。

そうならないために、法定解除は原則的には認めず、当事者全員が承諾している合意解除は可能という結論になります。

 

法定解除できる例外の一例としては、相続人の一部を除外して行われた場合、相続人が一部の相続財産を隠して、協議が行われた場合等です。まともな協議があったとは言えない状況ですからね。

終わりに

合意解除には相続人間の信頼関係が必要ですし、全員の合意が必要である以上、当事者が多ければ多いほど、合意形成は難しくなります。

また、協議の解除により財産関係を一度リセットするにあたり、贈与税がかかったり、抹消登記が必要な場合もあったりと余計な手間や費用がかかることもあります。

基本的には遺産分割協議は一度きりということを念頭に、十分な準備、調査をして臨まれるのがよろしいのではないでしょうか。

 

(文責:児玉)

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