相続コラム

~遺言~
遺言書を作成しようと思ったら

2022.06.27

遺言

遺言書の種類とメリット・デメリット

はじめに

民法では普通方式の遺言として、以下の3つを規定しています。それぞれのメリット・デメリットと一緒にご紹介します。

なお、普通の反対で特別方式の遺言もありますが、かなり特殊な状況での遺言のためここでは割愛します。 

自筆証書遺言

遺言者が、遺言内容の全文・日付・氏名を自分で書いた上で押印します。これらが欠けたものは無効となります。財産目録は自書でなくパソコンを利用したり、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーをつけることもできますが、その場合には目録のすべてのページに署名押印が必要です。

法務局で保管してもらえる制度を利用すれば、紛失したり改ざんされることなく安心です。 

メリット

①自宅保管の場合には、費用はかかりません。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の費用は、保管の申請1件につき3,900円です。

②事前の打ち合わせや証人の手配などの必要がなく、思い立ったらすぐに作成することができます。(法務局で保管する場合には予約をしたうえで申請) 

デメリット

①法律的に間違いのない文章を作成することはなかなか困難です。法務局の保管制度では、様式はチェックしても内容はチェックはしてくれません。間違えていた場合には無効になってしまいます。

②自宅で保管している場合には、保管上の問題(見つからない、偽造変造の恐れ、貸金庫に入れてしまった)があります。よく筆跡鑑定などで真実性が争われています。

③自宅で保管している場合には、遺言執行の際に家庭裁判所で「検認手続」をしなければなりません。(法務局に保管している場合には不要)

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたうえで存在のみを公証役場で証明してもらえる遺言書の方式です。遺言者が証人2人以上の立会いの下、署名・押印した遺言書を封書にして公証人に提出します。この場合は自筆証書遺言と違い、本文は印刷等自筆でなくても構いません。代筆も可能です。

メリット

①内容を秘密にすることができます。公証役場で認証を受けますが、封をしたまま提出し、公証人による内容の確認は行われません。

②ワープロでの作成も可能です。ただし、署名は自分で書く必要があります。

②偽造・改ざんを防止することができます。

デメリット

①内容を秘密にする分、有効性の問題があります。

②公証役場に原本は保管しないため紛失盗難の恐れはあります。

③検認手続は必要です。

④作成費用がかかります(11,000円)。また、証人が必要なので、証人を頼んだ場合には費用が発生します。

 

公正証書遺言

証人2人以上の立会いのもと、遺言の内容を公証人に伝え、筆記してもらった上で読み聞かせてもらいます。その筆記に間違いがないことを確認した上で署名・押印します。

なお、遺言者が病気等のため公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が遺言者の自宅又は病院等へ出張して遺言書を作成することができます。

メリット

①公証人という専門家が作成するので、内容と形式の正確性は非常に高くなります。

②家庭裁判所の検認手続きが不要です。

③原本が必ず公証役場に保管されるので,遺言書が破棄されたり,隠匿や改ざんをされたりする心配もありません。公証役場に遺言の検索システムがあるため、遺言が見つからなくなることもありません。

デメリット

①自筆に比べて費用がかかります。相続財産の額によって作成費用が決まります。

②証人2名を用意しなければいけません。家族や相続人、受遺者は証人になることはできません。公証役場でお願いすることもできますが、その分費用がかかります。

 

おわりに

それぞれにメリット・デメリットがありますが、おすすめは公正証書遺言です。それは、民法には「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない」と規定されており、民法の規定に従わない遺言書は有効とは認められないからです。せっかく気持ちをこめて「この人に財産を譲りたい」ことを切々と書いたとしても、有効と認められなければ、作成が無駄になってしまいます。

費用面、時間や手間ひまなどの面も考慮してご自身にあったものはどれなのか、また作成に関して迷うことがあれば、専門家に是非ご相談ください。

 

(文責:高橋)

 

定額ご依頼フォーム
お問い合わせ