相続コラム

~相続財産(遺産)~
その他の財産の相続

2022.08.30

相続財産(遺産)

相続が発生した際の年金手続き

はじめに

相続が発生すると、亡くなった方の権利や義務が包括的に相続人に承継されることになります。
では、亡くなった方が年金を受給していた場合に、受給する権利も承継することができるのでしょうか。また年金に関する相続手続きはどのように進めていけばよいのでしょうか。 

年金受給権利は相続の対象となるのか

まず結論から申し上げますと、年金を受給する権利は一身専属権であるため相続の対象とはなりません。
一身専属権とは権利の性質等を鑑みて、その人であるから享受できる権利のことです。
年金受給権の他には慰謝料請求権や著作者人格権などが例として挙げられます。
よって相続人は年金の不正受給を防ぐために、死亡の事実を速やかに報告しなければいけません。 

相続に関する年金手続き

(1)年金受給権者死亡届(報告書)の提出

年金受給者が亡くなった場合、まず初めに年金受給権者死亡届(報告書)を年金事務所等の所定の機関に提出する必要があります。
提出しなければ年金の支給が続くことになるため、不正受給になってしまいます。
なお、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、原則として「年金受給権者死亡届(報告書)」を省略することができます。
年金受給権者死亡届の提出と併せて、年金手帳や死亡診断書など死亡の事実が確認できる書類の提出が必要となります。 

(2)未支給年金の調査

年金の支給時期に関して、2か月分の年金が後払いで振り込まれることになっています。
つまり、亡くなった時期に付随して未支給の年金が発生する可能性があるということです。
この未支給年金に関しては、亡くなった方と生計を共にしていた配偶者や子供、両親、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の三親等以内の親族が請求することにより受取が可能です。
受取申請は年金事務所等に「未支給年金請求書」の提出と併せて、年金証書や亡くなった方の戸籍謄本、申請者と亡くなった方の関係がわかる戸籍謄本、生計を共にしていたことの証明として住民票等、受取先の銀行口座情報の提出が必要です。
もし亡くなった方とは世帯が異なる場合は、別途書類が必要となります。 

(3)遺族基礎年金制度・遺族厚生年金制度の利用

遺族が利用できる制度の一つとして、遺族基礎年金・遺族厚生年金があります。
まず遺族基礎年金について、亡くなった方が国民年金に加入していた場合に、生計を共にしていた「子どものいる配偶者」や「子ども自身」が年金をもらえる制度です。
誰でももらえるというわけではなく、その子どもが18歳になる年度(年度末3月31日)を超えていない場合、またはその子どもが20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある場合のみ受給することができます。 

遺族厚生年金について、こちらは亡くなった方が厚生年金に加入していた場合に生計を共にしていた下記の方々で、優先順位の最も高い方が受け取ることができます。

第1位 妻
第2位 子供
第3位 夫
第4位 父母
第5位 孫
第6位 祖父母
※上記順位の中でも、さらに細かな条件が規定されています。

遺族基礎年金との違いとして、子どものいない配偶者であっても制度を利用できるという部分が大きいです。
さらに遺族基礎年金と遺族厚生年金は、一定の条件を満たす場合はどちらも受給することができます。 

(2)(3)以外にも遺族が利用できる年金関連制度は多くあります。

受給資格がある場合は基本的にもらっておいて損はありませんので、期限内に順次申請を行うことをおすすめします。 

おわりに

亡くなった方の収入によって主に生計を立てていた家庭にとって、亡くなった後の金銭面の不安というものは非常に大きな問題です。
実際に年金受給については承継することができませんが、関連する制度を利用することでその不安を少しでも軽減することはできます。
ポイントはまず死亡を届け出ることと、少し落ち着いてきたら期限内に自分が該当する制度を上手く活用していくことです。
制度利用ができることも亡くなった方が残した立派な権利ですので、ぜひ頭の片隅に覚えておきましょう。 

(文責:坂本)

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