相続コラム

~遺産分割~
遺産分割協議、こんな時は?

2022.09.20

遺産分割

相続人の一人が認知症だったとき

認知症の相続人は遺産分割できるのか?

相続人の中に認知症の方がいた場合、遺産分割協議はできません。
認知症の方は意思能力がないとされ法律行為を単独で行うことができないからです。
とはいえ発生した相続をそのまま放置するわけにも行きません。どのような方法で遺産を分けたら良いのでしょうか。

遺産を分けるには?

認知症の方がいる場合、遺産を分ける方法は二つあります。
それは「法定相続」と「成年後見人を選任しての遺産分割協議」です。以下で説明します。

法定相続

法定相続は、法律に定められた法定相続分に則って遺産を分ける方法です。
相続人の全員が、きっちり法定相続分を相続します。遺産分割協議をする必要はありませんので、とりあえず相続を終わらせることは出来ます。
ただし大きなデメリットとして、遺産の中に不動産があった場合は共有になってしまいます。
売却する際に共有者の一人が認知症の場合、そこで躓いてしまうことが考えられますので、法定相続で進めてしまう前によく考えましょう。

成年後見人の選任

成年後見人は、本人に代わって法律行為をしてくれる人を選任する制度です。
最近は親族よりも司法書士や弁護士等の専門家が選ばれることが多いようです。
成年後見人は、本人に代わり遺産分割協議に参加することができます。
ただし、法定相続分を下回る内容の遺産分割協議はできません。
それでは法定相続と同じような気もしますが、認知症の本人の法定相続分が確保されていれば良く、
残りの財産を残りの相続人でどのように分割するかは自由なので、法定相続よりもやや柔軟な協議が可能になります。
成年後見人を選任することの一番のデメリットは、費用がかかるということです。
安くても一か月2万円と言われており、認知症の本人に全く収入や資産がないのであれば、その費用はどこから捻出するのかという問題があります。
また、成年後見人は基本的に本人の死亡まで解任や辞任ができません。
遺産分割が終わったから辞任してくださいというわけにはいきませんので、こちらも選任する前によく考えましょう。

代筆はやめましょう

本人の署名と押印があれば遺産分割協議書が作成ができるのですから、代筆したい気持ちは尤もです。
しかし、そもそも代筆というより「意思能力のない本人に無断で法律文書に署名」という行為なので、私文書偽造となってしまいます。

認知症の相続人対策は?

相続が起こってしまってからでは、先に述べた法定相続か成年後見人の二択しか遺産分割をする方法はありません。そうなる前に、できる限り対策をしておきましょう。

遺言を作成しておく

自分の相続人に認知症の方がいる場合、ぜひとも遺言書を作成しておきましょう。
遺言書があれば、その通りに遺産を分けることができます。

相続発生前に、成年後見人を親族で申し立てる

成年後見人は司法書士や弁護士が選任されることが多いと先述しましたが、親族が選任されることももちろんあります。本人に多額の資産や賃料収入がある場合は難しいですが、そうでない場合は親族が後見人として選任される余地はあります。親族なので、後見人への報酬は無報酬とすることも不可能ではありません。
ただし、この場合、本人と成年後見人が同時に相続人となった場合、利益相反となりますので成年後見人はその立場で遺産分割協議に参加することはできません。この場合は特別代理人といって、別の人に遺産分割についての代理人になってもらう必要があります(必ずしも専門家である必要はありません)。
特別代理人としての報酬は必要になりますが、専門家が成年後見人になった場合に比べてかなり費用を抑えることができるでしょう。
親族が成年後見人になれる余地があるかどうか専門家に相談してみる価値は十分にあります。

おわりに

認知症の方が相続人になってしまった場合、思うように遺産が分けられないという事がお分かりいただけたかと思います。事前の対策が肝心になりますので、お困りの際はぜひご相談ください。

(文責:川上)

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