相続コラム

~相続登記~
複雑な事例

2023.03.20

相続登記

内縁の妻や夫が財産を受け取るときの相続手続

はじめに

相続が開始した際、亡くなった方の配偶者は常に相続人として相続財産を承継する資格があります。
一方で多様性が認められつつある現代では、夫婦関係にもさまざまな形があります。

内縁関係にある夫婦とは、事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届を提出していないため戸籍上・法律上配偶者として認められていない夫婦のことをいいます。

婚姻届の提出がないため婚姻によって同じ姓にはなっていませんが、生活をともにしていたり、子どもがいる内縁関係の夫婦もいます。いわゆる事実婚の状態です。
今回は内縁の妻や夫は相続の際にどのように財産を承継することになるのか、登記するために注意すべきことを含めご紹介します。 

内縁の妻や夫は法定相続人に含まれない

まず結論からお伝えすると、被相続人(亡くなった方)の内縁関係にある妻や夫は、法定相続人に含まれません
法定相続人とは法律で定められた相続財産承継人であり、簡単にいえば財産を承継するにあたり優先される人たちです。
法定相続人について、被相続人の配偶者は常に相続人となり、その他の相続人は下記の順位で定められています。

配偶者

 

第1順位 被相続人の子

第2順位 被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)

3順位 被相続人の兄弟姉妹

 記載の通り内縁関係にある方は法定相続人には含まれないため、どれだけ長く一緒に生活しても、二人の間に子どもがいても、内縁の妻や夫は原則相続人にはならないのです。

よって被相続人の財産を承継するためには、別途手続きを進めていく必要があります。 

内縁関係のパートナーが相続財産を受け取る方法とは?

先に述べたように、内縁関係にあるパートナーは法定相続分での相続分配では相続人となることができません。
財産を受け取るには主に生前贈与、遺贈、特別縁故者としての請求などの制度を利用する必要があります。
また併せて不動産登記手続を行う際も、登記原因に記載する事項が「相続」ではなく、「贈与」「遺贈」「民法958条の3の審判」等となりますのでご注意ください。 

(1)生前贈与

名前の通り、生前の内に預貯金などの財産をパートナーに贈与しておく方法です。
シンプルでわかりやすいのですが、注意したいのが贈与税です。
贈与税の非課税枠は年間110万円までと決まっているため、一度に全額贈与するなどしてしまうと多額の贈与税が課税されます。
贈与税の税率は一般的に相続税の税率等より高くなってしまうため、長期に渡って計画的に少額ずつ贈与していくことがおすすめです。 

(2)遺贈

遺贈とは、亡くなった方が遺言によって相続財産の贈与方法について決定することです。
遺言に財産を内縁のパートナーに遺贈する旨記載しておくことで、原則遺言内容に従って不動産や預貯金が分配されます。
また生前贈与と異なり相続税が適用されるため、贈与税よりもお得になる可能性があります。
注意点ですが、法定相続人である配偶者・子ども・父母・祖父母には遺留分といって最低限受け取るべき割合が決められています。(兄弟姉妹には遺留分の規定はありません。)
遺言の内容に異議がある場合は、法定相続人から遺留分侵害額(滅殺)請求されることがあるため、遺留分に配慮した遺言内容を検討した方がよいかもしれません。 

(3)特別縁故者としての請求

相続人全員が相続放棄を行った等で法定相続人に該当する者が誰もいない場合や、債権者や遺言での受遺者がいない場合、亡くなった方と特別な縁故関係にあったと裁判所で認められると特別縁故者として第三者が遺産を相続することができます。
縁故者の例ですが、内縁関係にあった方や老後の介護を任されていた方などが挙げられます。
法定相続人や債権者・受遺者が優先されるので、他に遺産について関係者が一切いないことが裁判所で認められて初めて特別縁故者となりたいことを裁判所に申し立てることができます。 

よって大まかな流れとしては、下記のようになります。

①財産の調査と整理(裁判所による相続財産管理人の選任)

②裁判所による相続人不存在の確定

③特別縁故者の申立てと認定

 おわりに

法定相続人ではない内縁関係にあっても、相続財産を受け取ることは可能です。
生前であれば生前贈与を少しずつ始めてみる、遺言書を作成しておく、亡くなられた際は特別縁故者の申立てについて調べてみる等、できることから進めてみましょう。
いずれにせよ、法定相続人との関係や連絡を含め法定相続の場合より複雑になってしまう可能性が高いため、司法書士等の専門家にご相談いただくことをおすすめします。
ぜひお気軽にご相談ください。

 

(文責:坂本)

 

 

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