相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2023.03.27

相続に関する税金

相続税を安くするには~相続税対策~

はじめに

どのような税金であれ少しでも安く済ませたいという思いは、誰しもが抱いているものです。相続税も、工夫次第では節税することができますので、いくつか簡単にご紹介します。 

生前贈与を活用

相続税の対策を行う上で最もメジャーな方法です。
中でも気軽にできるのは、毎年110万円以下の財産を子や孫に譲り渡す暦年贈与と呼ばれるものです。贈与税は受贈者ひとり当たり年間110万円の基礎控除があり、その範囲で贈与する分には税金がかかりません。(※年間110万円を超えたら課税されます。)
ただし暦年贈与をする場合、毎年同じ相手に同じ金額を贈与していると連年贈与や定期贈与とみなされ、高額の税金がかかることがあるので注意が必要です。それらとみなされないためには、例えば以下のような工夫が必要です。

 ・毎年同じ日に贈与するのではなく、時期をずらす。(孫の進学に合わせる等)

 ・金額や方法を少しずつ変える。

 ・毎回、贈与契約書を作成する。

こちらに挙げたもの以外にも工夫方法は様々ありますが、暦年贈与を効率的に行えば相続税の軽減を図ることが出来ます。
また、相続開始前(死亡前)3年以内に行われた贈与については相続財産に加えて計算しなければならない点も注意が必要です。これは基礎控除の年間110万円以下の贈与であっても適用されます。よって、暦年贈与は早めに開始することをお勧めします。
その他の生前贈与の方法としては、20歳以上の子や孫へ住宅取得資金を贈与する・教育資金贈与信託を利用する・相続時精算課税制度を利用する・贈与の配偶者控除を利用する、などがあります。

 

生命保険を活用

生命保険は契約者・被保険者・受取人が誰かによって、相続税対策として様々に活用できます。以下代表的なパターンでご説明します。

 

契約者

被保険者

受取人

相続の内容

種類

(1)

被相続人

被相続人

相続人

死亡保険金

相続税

(2)

被相続人

相続人

相続人

保険契約の権利

相続税

(3)

相続人

被相続人

相続人

死亡保険金

所得税

 

(1)相続税申告時、生命保険金の非課税枠を利用することができるので、その分が節税となります。

   この非課税枠は、相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分です。

   ※ここでいう法定相続人の数とは、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかった ものとした場合の相続人の数をいいます。また、法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

(2)相続税申告時、相続税評価額は解約返戻金の金額となります。

   解約返戻金とは生命保険を途中で解約した場合に払い戻される金額のことです。

   生命保険の中には初期の解約返戻金の金額が低額で、後で解約返戻金の金額が上がるものがあるので、このような生命保険を相続人等にかけ、解約返戻金の金額が低いうちに相続させられれば節税ができます。

(3)受取時に課せられる所得税で節税する方法です。

   この場合の所得税を計算する際、保険金額から支払った保険料と50万円を差し引き、2分の1を乗じることができるので、相続税の税率と所得税の税率が同じ場合は、生命保険金に所得税が課税された方が税金が安くなります。

   ただし、生命保険金の非課税額を超える場合のみに有効です。 

養子縁組で法定相続人を増やす

法定相続人を増やして、基礎控除額や生命保険金・死亡退職金の非課税枠を増やすことができます。また、相続人が増えれば一人当たりの相続分が減少するので、税率を下げることも可能です。孫や子の配偶者を養子にするケースが多いです。

ただし、注意が必要な点もあります。

まず、法定相続人の数に含めることができる養子の数は、以下のように決まっています。

・実子がいる場合が、養子のうち1人まで

・実子がいない場合が、養子のうち2人まで

つまり、この人数以上を養子にしても節税にはなりません。

また養子縁組することで実子と養子が権利関係で揉めたりと相続争いに発展する可能性もあります。養子縁組を考える際はご家族とよく話し合いをすることをお勧めします。 

不動産で対策する

相続税申告時の土地の評価額計算には小規模宅地等の特例というものがあり、そちらに該当する場合、最大で80%も評価額を減額することができます。
配偶者や同居している親族(さらに要件あり)がその土地を相続することや、上限面積なども決まっていますので、事前の対策(同居をする等)や適用判断は、専門家にご相談されることをお勧めします。

また、賃貸アパート等を建築・経営することで、土地や建物の評価を下げることもできます。
アパート建築された土地は「貸家建付地」という扱いになり、「自用地」として利用されている場合と比較すると評価額を下げることができます。 
そしてアパートは貸家なので、相続税における評価額は、借家権(一律30%)の評価額を差し引いて計算します。そのため「固定資産税評価額」からさらに3割ほど安くなります。
ただし賃貸経営には当然空室リスクがあります。入居率が下がると賃貸割合が下がり、評価減の効果も下がりますので、その点には注意が必要です。 

墓地・仏具等や葬儀関係での対策

お墓などの祭祀財産(位牌,仏壇,墓碑,墓地など)は相続税の非課税財産なので、生前に買っておけば、相続税が節税できます。ただし以下の点に注意が必要です。

・相続があった後に購入したものは対象にならない。

・生前に購入したものの代金が未払いの場合は、債務控除として認められない。

・金の仏具や骨董品として価値があるものは、非課税財産として認められないこともある。

また、少し強引な気もしますが、盛大な葬儀を行って、葬儀費用としての債務控除を拡大するという手もあります。 

公益団体や地方公共団体に遺産を寄附

遺産を寄附した場合は、相続税が非課税となる特例があります。要件は以下の通りです。

・相続または遺贈によって取得した財産を寄附すること

・寄附をした先が国や地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献する公益法人であること

・相続税の申告期限(相続開始後10か月以内)までに寄附すること

ただし、次のような場合にはこの非課税の特例は適用されず、その寄附または支出した財産の額は相続税の課税価格に算入されることになるので注意が必要です。

・寄附等を受けた日から2年を経過した日までに、特定の公益法人または特定の公益信託に該当しないこととなった場合や、その公益法人が寄附により取得した財産をその公益を目的とする事業に使用していない場合。

・その寄附等をした人や、その親族など特別の関係がある人の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果になると認められる場合。 

おわりに

以上、相続税対策としてメジャーなものををいくつかご紹介しましたが、まだまだ方法はたくさんございます。また、ここに挙げたものでも、自分で対策しようとするととても難しく感じられるかと思います。節税対策をお考えの際は、ぜひ経験豊富な専門家にご相談されることをお勧めいたします。

(文責:尾上)

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