相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2023.04.03

相続に関する税金

小規模宅地等の特例

 

はじめに

不動産は、相続税の対象となる財産の中で大きなウエイトを占めるだけでなく、使用状況によって減額の特例を利用することができ、納税額に大きな影響を与えます。
本稿では、土地の評価額を減額できる小規模宅地等の特例についてご紹介いたします。 

特例の概要

個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の、事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のもの(※)がある場合、その宅地等のうち一定の面積までの部分について、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、決められた割合を減額するものです。

なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等、この特例の適用を受けられないケースもあります。

(※)建物又は構築物の敷地の用に供されている宅地等(農地及び採草放牧地は除く)をいい、棚卸資産及びこれに準ずる資産を除きます。 

減額される割合

以下の表の通りです。

相続開始の直前における宅地等の利用区分

要件

限度面積

減額割合

被相続人等の事業の用に供されていた宅地等

貸付事業以外の事業用の宅地等

①特定事業用宅地等に

 該当する宅地等

400㎡

80%

貸付事業用の宅地等

一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等

②特定同族会社事業用宅地

 等に該当する宅地等

400㎡

80%

③貸付事業用宅地等に

 該当する宅地等

200㎡

50%

一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等

④貸付事業用宅地等に

 該当する宅地等

200㎡

50%

被相続人等の貸付事業用の宅地等

⑤貸付事業用宅地等に

 該当する宅地等

200㎡

50%

被相続人等の居住の用に供されていた

宅地等

⑥特定居住用宅地等に

 該当する宅地等

330㎡

80%

限度面積は、特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて判定します。

特例の適用を選択する宅地等

限度面積

特定事業用等宅地等(①又は②)及び

特定居住用等宅地等(⑥)
(貸付事業用宅地等がない場合)

(①+②)≦400

⑥≦330

両方を選択する場合は、合計730

貸付事業用宅地等(③、④又は⑤)及び

それ以外の宅地等(①、②又は⑥)
(貸付事業用宅地等がある場合)

(①+②)×200/400+⑥×200/330 +(③+④+⑤)≦200

 

特例の対象となる宅地等

1.特定居住用宅地等

相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。(なお、その宅地等が2以上ある場合には、主としてその居住の用に供していた一の宅地等に限ります。)

一般の方にとっては一番身近となる特例です。

まず大前提として、特定居住用宅地等の対象となるのは、配偶者など、亡くなった人又は亡くなった人と同じ生計の親族が住んでいた土地でなければなりません。また、取得した土地を相続税の申告期限まで所有し続けたり、居住し続けたりする必要があります。(配偶者には要件がありません。) 

2.貸付事業用宅地等

相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る)の用に供されていた宅地等(その相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等を除く)で、一定の要件に該当する被相続人の親族が、相続又は遺贈により取得したものをいいます。

代表的な貸付事業用宅地等は、賃貸アパートの敷地や貸駐車場です。そしてその貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていることが必要です。

また、相当の対価で貸し付けをしているか・空室の状況などが特例の適用を認めるかの論点になることもあります。 

3.特定事業用宅地等

相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く)の用に供されていた宅地等(その相続の開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等を除く)で、一定の要件に該当する被相続人の親族が、相続又は遺贈により取得したものをいいます。

ここで言う事業とは、所得税における事業所得に該当するものです。自分の土地で店を経営している場合などが当てはまります。

注意点としては、亡くなった人のやっていた事業と同じ事業を申告期限まで継続する必要がある点です。 

4.特定同族会社事業用宅地等

相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く)の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が、相続又は遺贈により取得したものをいいます。

つまり、亡くなった人の同族会社の事業の敷地にも小規模宅地等の特例が適用できます。

要件のひとつに、相続税の申告期限においてその法人の役員であることというものがあるので、注意が必要です。 

5.日本郵便株式会社に貸し付けられている一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等

日本郵便株式会社に貸し付けられている郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等については、一定の要件を満たす場合、特定事業用宅地等に該当するものとして、この特例の適用を受けることができます。 

特例を受けるための手続

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。 

おわりに

以上、小規模宅地等の特例について、簡単にご紹介いたしました。

実際の計算方法や適用要件等はとても複雑です。ただし、適正に特例を利用できればかなりの節税が期待できます。ご自身が相続された土地が該当するかどうかのご判断は、是非経験豊富な専門家にご相談されることをお勧めいたします。

(文責:尾上)

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