相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2023.04.10

相続に関する税金

農地相続の特例

はじめに

農業を営んでいた被相続人から農地を相続した場合、一定の要件を満たせば相続税に関して農地の納税猶予の特例が受けられます。

これは、農地を農業目的で使用している限りにおいては到底実現しない高い評価額により相続税が課税されてしまうと、農業を継続したくても相続税を払うために農地を売却せざるを得ないという問題が生じるため、自ら農業経営を継続する相続人を税制面から支援するために設けられた制度です。

本稿ではこの制度についてご紹介していきます。 

特例について

農業を営んでいた被相続人又は特定貸付け等を行っていた被相続人から、一定の相続人が一定の農地等を相続や遺贈によって取得し、引き続き農業を営む場合又は特定貸付け等を行う場合、一定の要件の下に、その取得した農地等の価額のうち農業投資価格(※)による価額を超える部分に対応する相続税額の納税が猶予されます。この猶予される相続税額を「農地等納税猶予税額」といいます。

(※)国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で、取得した農地等の所在する都道府県ごとに確認することができます。 

この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなったときに免除されます。なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した農地等については、この特例の適用を受けることはできません。

  1. 特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
  2. 特例の適用を受けた農業相続人が、この特例の適用を受ける農地等の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合(特定貸付け等を行っていない相続人に限る。)
  3. 特例農地等のうち、平成311日において三大都市圏(首都圏、近畿圏及び中部圏)の特定市以外の区域内に所在する市街化区域内農地等(生産緑地等を除く)について特例の適用を受け、当該適用を受けた農業相続人が、相続税の申告書の提出期限の翌日から農業を20年間継続した場合(特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限る。) 

特例を受けるための要件

この特例を受けることができるのは、次の要件に該当する場合です。

【被相続人の要件】

次のいずれかに該当する人であること。

  1. 死亡の日まで農業を営んでいた人
  2. 農地等の生前一括贈与をした人※死亡の日まで受贈者が贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていた場合に限られます。
  3. 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
  4. 死亡の日まで特定貸付け等を行っていた人※特定貸付け等とは、農業経営基盤強化促進法、都市農地の貸借の円滑化に関する法律又は特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律などの規定による一定の貸付けをいいます。 

【農業相続人の要件】

次のいずれかに該当する人であること。

  1. 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人
  2. 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるため、その推定相続人の1人に対し、農地等について使用貸借による権利を設定して農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人※贈与者の死亡後も引き続いてその推定相続人が農業経営を行うものに限ります。
  3. 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、営農困難時貸付けをし、税務署長に届出をした人※贈与者の死亡後も引き続いて賃借権等の設定による貸付けを行うものに限ります。
  4. 相続税の申告期限までに特定貸付け等を行った人(農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者である場合には、相続税の申告期限において特定貸付け等を行っている人) 

【特例農地等の要件】

次のいずれかに該当するもの。

  1. 被相続人が農業の用に供していた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  2. 被相続人が特定貸付け等を行っていた農地又は採草放牧地で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  3. 被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
  4. 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で、被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの
  5. 相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの 

特例を受けるための手続等

1.相続税の申告手続

相続税の申告書に所定の事項を記載し期限内に提出するとともに、農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供することが必要です。申告書には相続税の納税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類など一定の書類を添付することが必要です。

2.納税猶予期間中の継続届出

納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続いてこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載した「継続届出書」を提出することが必要です。 

おわりに

以上、農地の納税猶予の特例の要件等をご紹介いたしましたが、実際に特例を受けようとすると、さらに細かい要件を求められるものもあります。ご自身が農地を相続された場合には、経験豊富な専門家へご相談されることをお勧めいたします。

(文責:尾上)

定額ご依頼フォーム
お問い合わせ