相続コラム

~相続に関する税金~
相続税

2023.04.17

相続に関する税金

申告期限までに遺産分割協議が終わらないときはどうすればいい?  

はじめに

相続人が複数人いて遺言書がない場合、相続人間で財産をどう分けるか話し合いをしますが、なかなか折り合いがつかず、分割に何年もかかってしまうようなケースもあります。

本稿ではそのような場合の相続税申告・納税についてご説明します。 

申告・納税は、期限までにしなければならない

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合、被相続人の住所地を所轄する税務署に行うことになっています。

相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません。

そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。 

使えない特例が出てくる

分割が決まっていないと、相続税の特例である小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や、配偶者の税額の軽減の特例などは適用できないので注意が必要です。

ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」に分割されていない理由・分割の見込みの詳細・適用を受けようとする特例等を記載して未分割での申告の時に提出し、分割決定の日の翌日から4カ月以内に更正の請求または修正申告を行うことで、上記の特例の適用を受けることができるようになります。なお名前の通り、こちらの特例の適用を受ける場合には申告期限から3年以内に遺産分割協議を確定させる必要があります。

また農地の納税猶予は、通常の申告期限までに分割することが要件のため、未分割の状態では使えません。農地の納税猶予を受けたい場合は、遺言の作成など未分割での申告にならないように対策する必要があります。 

分割が決まった後は・・・

民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合で申告した後に、相続財産の分割が決まり、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告または更正の請求をすることができます。

修正申告は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合にすることができます。

更正の請求は、初めに申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合にすることができます。ただし、修正申告と異なり、更正の請求ができるのは、分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内となっています。 

おわりに

以上、遺産分割が決まらなかった際の相続税申告・納税について簡単にご説明しました。

一時的とはいえ必要以上の税金を支払わなければならない点や、数年後に手続きし直さなければならない点など、ただでさえ複雑な相続が、さらに手間のかかるものになってしまうということがお分かりいただけたかと思います。

遺産分割にお困りの際は、早めに経験豊富な専門家へご相談されることをお勧めいたします。

(文責:尾上)

定額ご依頼フォーム
お問い合わせ