相続コラム

~相続財産(遺産)~
不動産の相続

2023.06.12

相続財産(遺産)

相続した土地を放棄したい! 相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度

 

はじめに

近年、空き地などの所有者不明土地が増加しており、国も問題視し対応策を模索しています。
これは土地の活用法がわからず手放したい方や相続登記をせず亡くなった方の名義のまま放置してしまう方が一定数いることにより発生する問題で、所有者が不明なままであると国もいざ公共事業等に活用しようと思っても対応ができなくなってしまいます。
このような所有者不明土地をなくすために、国は新たに相続登記の義務化や相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度を新設することとなりました。
今回は、この「相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度」に焦点を当てご紹介します。 

相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度とは

実務の中でもよく問題となるのが、地方に住んでいた被相続人(亡くなった方)が所有していた土地を相続することとなったが、所有希望者が一人もおらず誰が相続するのか協議が難航しているという点です。 

そこで2021年4月に成立したのが、「相続土地国庫帰属法」です。

相続により土地の所有者となった者が、一定の要件を満たせばその所有権を国庫に帰属させることができる制度で、取り扱いに困っている土地の所有権を手放すことができます。
この法律に基づいた制度は2023年4月27日から開始される予定です。 

国庫帰属制度の要件は?

実際に重要なのは、「この制度の要件を自分の場合は満たしているのか」という点です。
土地の所有権を手放し、ある種国に土地を押し付ける(言い方は悪いですが…)形になりますので、制度を利用するためには一定の要件が設けられています。

(1)相続又は遺贈等により該当土地の所有権を取得した者が申請を行うこと

制度の趣旨は相続等によってやむを得ず所有者となるしかなかった方の対応策を増やすことにありますから、もちろん自ら売買等で積極的に所有者となった場合にはこの制度は利用することができません。

また土地を複数人で共有している際は共有者全員で申請を行う必要があります。 

(2)以下の要件の全てに該当しない土地であること

  1. 建物が建っている土地
  2. 担保権や使用収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 通路その他の第三者による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. 土壌汚染対策法規定する特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
  6. 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  7. 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  8. 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  9. 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
  10. その他通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの 

要件を簡単にまとめると、余計な問題のない更地でなければ国庫に帰属させることができないということです。 

要件を満たした後の注意点

先述した要件を満たすと法務大臣の承認を経て、土地の所有権が国庫に帰属することになります。
制度を利用する上でさらに注意しなければならないのが、利用に際し各種費用が発生し申請人はその費用を負担する必要があるという点です。 

まず審査に際し手数料を支払います。
さらに、申請が認められると、その後10年分の管理費用の納付が必要とされています。
管理費用を支払うことができなければ国庫に帰属させることはできません。
つまり、制度利用に際し発生する費用は申請人が負担しなければ手続きできないということです。
決して無償で土地を受け取ってくれる慈善事業のようなものではありませんので、ご注意ください。 

おわりに

相続等により取得した土地を国庫に帰属させる制度については新設される制度であるがゆえに、いまだ不透明な部分がある制度ではありますが、実施される中で精度がより洗練化されていくことでしょうし、取り扱いに困っている土地についての選択肢が増えることは非常によいことであると感じます。

実務上でも今後注目したい制度ですので、もし将来的に所有者不在土地となる可能性がある土地がありましたら、相続土地国庫帰属法に基づく制度について動向をチェックすることをおすすめします。

(文責:坂本)

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